連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第89回 契約書等を外国で作成すると印紙税は課税されない?
契約書等を外国で作成すると印紙税は課税されない?
Q.:
外国で契約書等を作成した場合には、印紙税は課税されないと聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
当社は日本法人です。法人税の場合は、外国で稼得した所得であっても日本において課税されます。しかし、印紙税の場合は、外国で契約書等を作成した場合には、日本法人であっても印紙税は課税されないということで宜しいのでしょうか?
A:
外国で契約書等を作成した場合には、印紙税は課税されません。また、その作成者が日本法人であっても、契約書等の作成場所が外国であれば、印紙税が課税されることはありません。
【解説】
印紙税については、日本法人であることをもって納税義務があると定められているわけではありません。印紙税の納税義務は、課税文書を作成した時に成立し、そして、課税文書の作成者が、その作成した課税文書について印紙税の納税義務があると定められています(印紙税法3条1項、国税通則法15条2項十一号)。
印紙税法は、日本の法律ですからその適用地域は日本国内(いわゆる本邦地域内)に限られますので、印紙税の納税義務が上記にように定められている以上、契約書等が外国(法施行地外)において作成された場合には、その契約書等の作成の時には印紙税法の適用はありませんので、印紙税の納税義務が生ずることはありません。
この点は、印紙税の基本通達においても下記のとおり明らかにされています。
「文書の作成場所が法施行地外である場合の当該文書については、たとえ当該文書に基づく権利の行使又は当該文書の保存が法施行地内で行われるものであっても、法は適用されない。」(印紙税基本通達49条)
なお、ここで重要となってくるのが、「作成の時」とはどの時点をいうのかということになりますが、この点については、印紙税基本通達44条に規定されていますので、同通達を是非ご参照下さい。
一つ例を取り上げてご説明をいたします。契約書のように契約当事者の意思の合致を証明することを目的として作成される課税文書の作成の時は、その意思の合致を証明(具体的には、契約書への最終の署名、押印)する時とされています。そのため、契約当事者である貴社と相手方がともに外国で契約書に署名等した場合には、その作成場所は外国となりますので、印紙税は課税されません。
また、貴社が先に日本国内で署名等を行い、これを外国の相手方に送付して、その相手方に外国で署名等をしてもらった場合にも印紙税が課税されることはありません(契約書への最終の署名等が外国で行われていますので、外国で作成された文書となります。逆に、契約当事者の相手方が先に外国で署名等を行ったうえでこれを日本の貴社に送付してきて、これを受け取った貴社が日本国内で最終の署名等をした場合は、当該文書は日本国内で作成された文書となります)。
以上のように、印紙税については、契約書等の作成場所が、日本国内か否かがとても重要となります。日本国内で保存されている契約書等が外国で作成されたものであったとしても、税務調査の際に調査官がその契約書等を確認して、外国で作成されたものであることが分からなければトラブルになります。
そのため、契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければその事実を付記しておく等、外国で作成されたものであることを明らかにしておくことが肝要です。
鳥飼総合法律事務所 税理士 佐野 幸雄
※ 本記事の内容は、執筆時現在の法令等に基づいています。
※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。
関連するコラム
-
2020.06.06
山田 重則
【固定資産税】「市街地宅地評価法」とその評価ミスを教えてください。
固定資産評価基準上、市街地的形態を形成する地域にある宅地は、「市街地宅地評価法」に基づいて評価が行…
-
2020.06.06
山田 重則
【固定資産税】宅地はどのような方法で評価されますか?
宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地をいいます。現に建物が建築され…
-
2020.06.06
山田 重則
【固定資産税】固定資産評価基準上、土地はどのような方法で評価されますか?
土地の評価方法は、地目(田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地)によって異なります。…
-
2020.05.10
山田 重則
【固定資産税】何年前まで遡って過大な固定資産税相当額の返還を受けられますか?
固定資産の課税ミスがあった場合、地方税法に基づき過去5年間に過大に支払っていた固定資産税が還付され…