連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第87回 輸出の場合は金額をごまかしても大丈夫?!

輸出の場合は金額をごまかしても大丈夫?!

Q うちの会社で、今度新たに輸出業務を行うことになったのですが、取引先の外国会社から、「商品の金額を低くしたインボイスを発行してくれ」という依頼を受けています。どうやら相手国での関税を低くしたいためのようなのですが、このような依頼に応じてもよいのでしょうか?輸出なので、日本での関税については問題ないから、と言われているのですが・・・

 

A 応じてはいけません。金額を過少申告すると関税法違反にあたりますし、消費税の輸出免税を受けられない可能性も出てきます。

 

本件では、輸出に際してインボイスに物品の金額を低くして記載するという、いわゆるアンダーバリュー取引が問題となっています。

まず、当然ながら関税法との関係で問題となります。実際の価格とは異なる価格をインボイスに記載するわけですから、虚偽申告・虚偽書類提出として罰則(関税法111条)が課されます。

また、消費税との関係でも問題が生じます。輸出する物品には消費税の免税が認められています(消費税法7条1項)が、この輸出免税を受けるためには、「証明」が必要であり(同法7条2項)、この「証明」のためには、帳簿やインボイス等を保存しておかなければいけません(消費税法施行規則5条)。アンダーバリュー取引を行っていると、帳簿とインボイスとの記載がズレてしまうなど、輸出免税を受けるために必要な要件を欠いてしまう事態が生じる可能性があります。更に、相手国における関税の脱税の幇助もしくは共犯にも該当することになります。

上記のように、アンダーバリュー取引は様々なリスクを抱えています。輸入ではないので関税の脱税はない、等と気軽に考えてアンダーバリュー取引に応じないようにしましょう。

 

*なお、日本から輸出する際のインボイスは正規の値段を記載し、外国に輸入する際のインボイスをアンダーバリューとする手法も存在するようですが(相手国で日本で輸出した際に使用したインボイスが要求されない場合)、この場合も、相手国での関税の脱税の幇助もしくは共犯は成立します。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 小西 功朗

※ 本記事の内容は、執筆時現在の法令等に基づいています。

※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。

関連するコラム