連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第75回 儲かり過ぎたネットオークション?
儲かり過ぎたネットオークション?
Q 私は陶磁器の輸入販売の会社を営んでいますが、その傍ら、趣味と実益を兼ねて、知人らから骨董品の陶磁器類を買い入れたり、ネットオークションで販売等しています。今回たまたま掘出し物をオークションで売って、100万円ほどの大きな利益が出てしまったのですが、会社が調査を受けた際に、この販売の利益が計上されていないのではないかという指摘を受けました。これは個人的な取引なので、会社の収益ではないのではないでしょうか?
A 会社と個人とをきちんと区別していれば、会社の収益となることはありません。ただ、個人の雑所得として課税対象となりますので、売買の詳細はきちんと残しておく必要があります。
本件では、いわば趣味で行っていた個人的な取引による利益について、①会社の収益として取り扱われることがあるのか②会社の収益ではなかった場合に、個人の所得税との関係はどうなるのか、という2点が問題となっています。
まず①の点ですが、今回はたまたま、個人の行っていた取引が、会社の業務と非常に似通っていますし、大きな利益が出たとのことなので、会社の収益ではないかと指摘されるのはやむを得ないところかと思います。ですが、個人と会社とをきちんと分けてさえいれば、会社の取引とされることはありません。具体的には、会社のお金は使っていない、関係ないのだということを、通帳等を見せて説明していくということになるでしょう(そのためにも、取引に使用する口座等は会社名義ではなく、必ず個人の口座等を利用しましょう)。
次に問題となるのは、では個人の所得として税金がかかるのではないか、と言うことです。今回の例ですと、「あくまで趣味程度」ということなので事業所得ではなく、雑所得として取り扱われることになるでしょう。いずれにしても、「必要経費」が認められるのですが、今回はこの必要経費を認めてもらうために、苦労する可能性があります。骨董品の陶磁器を販売している以上、当然どこからか「仕入れ」ているわけですが、今回は「知人からの買い入れ」や「ネットオークションでの購入」が仕入れ元となっていると思われます。そうすると、どの品物をいくらで、いつ誰から買ったのか、きちんと記録として残っている可能性が低いからです(品物も「骨董品の陶磁器」ですので、どの品物を、と言うのを特定するのも難しそうです)。口座からの振込で払っている場合であればまだしも、現金払い、あるいは現金振り込みで払ってしまったような場合には、記録が残りません。こういった場合には、手書きのメモでもよいので、いつ、誰と、何を、いくらでといった事項をきちんと書き残しておき、調査官が来た際に説明できるように準備をしておくようにしましょう。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 小西 功朗
※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。
※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。
関連するコラム
-
2024.10.15
橋本 浩史
消費税法2条1項8号の「対価を得て行われる」(対価性)の意義が争われた税務判決 ~名古屋地方裁判所令和6年7月18日判決TAINS Z888-2624(控訴)~
1 はじめに 消費税法2条1項8号は、消費税の課税対象である「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を…
-
2024.09.30
山田 重則
Q 近年、新聞報道された過大徴収事案にはどのようなものがあるか?
A 近年、新聞報道された主な過大徴収事案は、下表のとおりです。ここから読み取れることは、①過大徴収は…
-
2024.09.29
山田 重則
固定資産税実務Q&A
<総論> Q 固定資産税の過大徴収はどの程度起きているか? Q 近年、新聞報道された過大徴収事案には…
-
2024.09.28
山田 重則
Q 固定資産評価審査委員会の決定が誤っていた場合、自治体は賠償責任を負うか?
A 自治体による固定資産の評価額(登録価格)を法的に争うには、まずはその自治体の固定資産評価審査委員…