連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第62回 補助金は調査で狙われやすい?~「期ずれ」の典型例~
Q 税務調査では色々と、狙われやすい項目があり、補助金等は狙われやすい、と聞いたのですが、なぜ補助金が危ないのでしょうか?
A 補助金の中には、年度末申請⇒年度内承認⇒次年度支払、という形で支払われるものがあるからです。このように、支払いに至る経緯が、定型的に期ずれが生じやすい形となっているものは、調査に来た際に「当たり」をつけやすく、狙いやすいのです。
地方公共団体などに申請する補助金の中には、経費補填型の助成金のように、収益になるものがあります。その中で、申請の手続が、年度末ころ(3月上旬~中旬頃)までに申請し、翌年度初め(4月頃)に支払われる、となっているものがあると思います。このような補助金を利用している場合に、収益の計上時期を翌年度にしていることが時々あるのです。
収益の計上時期は、「収入すべき権利が確定したときの属する年度」とされています。一般的には、補助金の「収入が確定する時期」は、申請の時期でもなければ、実際に支払われた時期でもなく、補助金の支給決定がなされたとき、と考えられます。支給決定がなされれば、補助金をください、ということができる(=権利が確定している)といえるからです。
ところが、上記のような年度末に申請するタイプの補助金の場合、下記のような理由から、この支給決定の時期を誤解してしまうことがあるのです。
・通知が届くのが3月末(年度末)の繁忙期で、他の書類と紛れてしまい、通知の管理がしっかりとできていない。
・通知が4月に到着したため、翌年度の計上と誤解してしまう(通知が届いた日ではなく、通知に記載されている、支給の決定がなされた日が問題。)。
・毎年同じ補助金を利用していると、毎年だいたい同じくらいの額が入ってくることになるため、計上時期に注意を払わなくなってしまう。
また、年度末に申請する補助金について、補助金を支払う側に立って考えると、まず、その年度内(3月中)に支給を決定すると思われます。支払う側の予算の関係があるからです。
このように、年度末に申請するタイプの補助金の場合、収益として計上する時期は、申請した年度である可能性がかなり高いにもかかわらず、翌年度が計上時期だと誤解しかねない事情が多くあります。ですから、調査官が、会社が間違っていないか探りを入れてくる(=狙ってくる)可能性が高い項目の一つになるのです。
もっとも、こういったある種定型的に「間違いが生じやすい」項目は、逆に対策を立てやすいということでもあります。思わぬ指摘を受けないよう、事前にしっかりと準備をしておきましょう。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 小西 功朗
※ 本記事の内容は、2015年3月末現在の法令及び税制改正大綱に基づいています。
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