連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第46回 税金を期限内納付したのに延滞税?!
税金を期限内納付したのに延滞税?!
Q.当社では、平成26年4月期の確定申告について課税標準額を過大に算出していた過誤が発覚したため、ただちに所轄税務署に対し減額更正の請求を行いましたところ、これが一部認められ、還付加算金とともに過大納付税相当額が還付されました。ところが、その後、所轄税務署よりお知らせがあり、別の誤りが見つかったとのことで、増額更正がされました。
概略しますと、原申告による法人税額を、例えば“100”とすると、減額更正により“60”と認められたが、その後、増額更正により“90”とされた、というものです。
ところで、当社は、原申告による法人税額“100”については、法定期限内に納付をしております。
ところが、今般の増額更正により、新たに納付すべきこととなった税額「30」(減額更正が認められた“60”と、増額更正による税額“90”との差額)について、法定納期限の翌日、つまり、平成26年7月1日から起算して計算した額の延滞税が課されたのです。当社は、平成26年6月末日までに、最終的に納付すべきこととなった税額“90”を上回る“100”を納付しているのです。それでも延滞税が課されるのでしょうか?
A.増額更正により新たに納付すべきことなった税額について、法定納期限の翌日から計算した延滞税が課されます。
【解説】
相続税についてではありますが、同種の事案について、裁判所が判断したものがあります(東京地方裁判所平成24年12月18日判決、同控訴審・東京高等裁判所平成25年6月27日判決)。
この判決文の中で裁判所は、国税の納税義務の成立、税務署長による更正及び再更正、過納金の還付等に関する国税通則法の規定を概観した上で、以下の通り判示しています。
「国税通則法においては,本件のように,国税の申告及び納税がされた後に減額更正がされると,減少した税額に係る部分の具体的納税義務は遡及的に消滅し,これに伴い,減額更正により減少した税額に係る納付については,これに対応する具体的納税義務が存在しなくなるので,所定の還付加算金を加算して過納金を還付することによる不当利得の清算関係のみが残ることになり,その後改めて増額更正がされた場合には,増額した税額に係る部分の具体的納税義務が新たに確定することになるのであるから,同法60条1項2号に基づき,更正により納付すべき国税があるとして,増額した税額に係る部分について,延滞税の納税義務が発生するものというべきである。
また,この場合に発生する延滞税の金額については,国税通則法60条2項及び同法61条1項1号に基づき,法定納期限の翌日からその国税を完納する日までの期間から,法定申告期限から1年を経過する日の翌日から更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間を控除した期間の日数に応じて計算されることになる。」
御社の例にあてはめると、減額更正により、100から60に減少した税額部分は、初めから納税義務が存在しなかったことになるので、その後、増額更正により60から90に増額した税額について納税義務が新たに確定することになり、そして、その場合の延滞税の計算は、税法の定めに則り、法定納期限の翌日から計算されることになる、というのです。
上記裁判例で、納税者は、法定納期限には事実として税金を完納しているから、国税通則法60条2項にいう「未納」は存在しないと主張しましたが、裁判所は、「未納」は、延滞税の要件ではないとして、この主張を採用しませんでした。
例えば御社の例で、御社が減額更正の請求を行った際に、課税庁が、“90”までの部分のみの減額更正を認めていたならば延滞税は発生しなかったわけですから、御社としては、不公平感が残り、納得しがたい結論ではあると思います。
しかし、国税通則法を厳密に適用すると、上記のような判断がなされることになるのです。
鳥飼総合法律事務所 パラリーガル 高瀬貴子
※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等に基づいています。
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