連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第20回 消費税率はいつから適用?
【消費税率はいつから適用?】
Q 当社は当事業年度において,業務用ソフトウェアの見直しを行い,平成26年4月30日に納入予定で,平成25年9月1日にソフトウェアの開発について請負契約を締結する予定です。消費税率が平成26年4月1日から引き上げられることになっていますが,今回のソフトウェア開発についても消費税率は8%が適用されますか?
A 平成25年9月30日までに締結されたソフトウェア開発の請負契約に基づくものについては,現行の5%の消費税率が適用されます。
(解説)
1. 消費税率の引上げ
現行5%の消費税率(地方消費税率を含みます。以下同じ。)が,平成26年4月1日から8%へ,さらに,1年半後の平成27年10月1日から10%へ2段階で引き上げられます。
したがって,原則としては,契約の締結時期や仕入れの時期等に関わらず,適用開始日以後にされる課税資産の譲渡等については,すべて引上げ後の税率が適用されることになります。
しかし,事業活動には多様なものがあり,取引によっては,その性質上,原則どおり,適用開始日から適用することが困難なものや適切でないものもあります。そこで,消費税法は,一定の取引について,消費税率引上げに係る「経過措置」を設けています。
2.経過措置について
主な「経過措置」として,次に掲げるものについては,譲渡等の時期が適用開始日以後であっても,現行の5%の消費税率が適用されます。
(1) 請負工事等
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した工事等の請負契約に基づき,平成26年4月1日以後に資産の譲渡等を行う場合
(2) 資産の貸付け
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき,平成26年4月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合の当該資産の貸付け
(3) 指定役務の提供,予約販売に係る書籍等,通信販売,有料老人ホーム,旅客運賃等
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結又は条件を提示した資産の譲渡等で一定のものについて,平成26年4月1日前に対価の全部又は一部を受領する場合
(4) 電気料金等
平成26年4月1日前から継続供給し,同日以後に支払を受ける権利が確定するもの
3.決算との関係で適用開始日にズレが生じ得るもの
法令に基づく「経過措置」ではありませんが,毎月の締日を20日としている3月決算の会社が,決算締切日を3月20日として,毎期継続して,3月21日から31日までの売上げ及び仕入れの締日を一致させ,翌期(4月)に計上している場合には,平成26年3月21日から平成26年3月31日までの売上げ及び仕入れについては,同年4月に行われたものとして,消費税の申告をすることができます。
鳥飼総合法律事務所
※ 本記事の内容は、2013年6月現在の法令等に基づいています。
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