連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第18回  特別償却は追加できる?

Q 当社では電力会社の値上げへの対策として、再生可能エネルギーの固定価格買取制度による売電を行うため、前年度に太陽光発電設備を導入し、グリーン投資減税の即時償却の対象としました。

  ところが、確定申告時に、設備一式を申告したと思っていたところ、後から、ある工務店で行った工事の分の明細が漏れていることがわかりました。今から更正の請求を行えば間に合うでしょうか。

 

A ご質問の場合には、更正の請求によって、即時償却額を増加させることはできませんので、当該部分については、通常の減価償却を行うことになります。

 

[解説]

1.更正の請求の範囲は広がったのでは?

 平成23年の税制改正前は、所得税額控除・外国税額控除等を含むほぼすべての制度に「当初申告要件」と言われる、当初の確定申告時において規定の適用を受ける旨の意思表示がされていると認められない場合には、後に更正の請求等によって適用額の拡大を行うことはできませんでした。

 しかし、所得税額控除に係る最高裁判決(平成21年7月10日)以降、当初申告によって納税者の意図が示されていれば、後からの適用でも問題ないとされ、修正申告書や更正の請求書を提出する際に、明細書を添付すれば認められることとされるように改正されました。

 

2.範囲が拡大されなかった部分

 ただし、すべての税額控除等につき、「当初申告要件」がなくなったわけではありません。所得税額控除や外国税額控除・受取配当等の益金不算入など、主に二重課税を排除するために設けられている制度については、当初申告時でなくても、適用を受けることができるようになりましたが、本件のグリーン投資減税や試験研究費の税額控除など、いわゆる優遇税制については、やはり当初の確定申告時に、適用を受ける旨の意思が表示されることが必要だとされています。したがって、当初の申告時に当該税制に係る明細書の添付がない場合だけでなく、一部の資産につき記載がなかった場合においても、記載もれの資産については、当該税制の適用を受ける旨の意思表示が当初の申告時点においてなかったと認定されてしまうことになります。

 

3.補助金を受けていた場合は?

一方、太陽光発電システムを導入した場合、国や地方公共団体から補助金を受けられることがあります。このように、補助金を受けて購入した装置については、当該補助金に係る金額につき、平成25年4月1日より、グリーン投資減税の対象外となることになりました。補助金自体が税金の優遇と類似の効果を及ぼすため、二重に恩恵を受けてしまうことを避けるためとされています。誤って多い額で特別償却や税額控除を行ってしまわないよう、併せて留意が必要です。

 

鳥飼総合法律事務所 税理士 窪澤 朋子

※ 本記事の内容は、2013年5月現在の法令等に基づいています。

関連するコラム