連載 リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第16回 QAであなたの知財マスター度をチェック!(後編)

第16回 QAであなたの知財マスター度をチェック!(後編)

前回に引き続き、知財マスター度チェックの後編です。

 

Q6.芸術的価値のあるクラシックカーが多数収蔵されている博物館に行って、クラシックカーを写真に収めてきました。その写真をSNSやブログにアップロードすることは違法になりますか。

Q6.違法になりません。 (自動車のような工業生産品に著作権はありません。美しい芸術的価値があるクラシックカーであっても、それ自体著作権法の保護の対象になりません。クラシックカーを撮った写真の著作権者はあなたですから、著作権者であるあなたが写真を複製してもインターネットで公表しても問題ありません。

 

Q7.株式会社Yは、社長の個人の名前を取って「鳥飼株式会社」という商号で自動車の販売の営業活動をしており、当然登記もしています。しかし、あるとき同じ自動車販売をしている「株式会社鳥飼」という会社から商標権侵害であるから商号の使用をやめよとの通知が来ました。調べると「鳥飼」という名前で商標登録がされていました。Yは「鳥飼株式会社」の商号の使用をやめなければならないのでしょうか。

A7.原則としてやめなくてよい。 (他人の登録商標を、その登録されている役務または商品について使用する場合には、商標権侵害となります。しかし、一定の例外が認められており、会社の名称を普通に用いられる方法で表示する限りは商標権の効力は及びません(商標法26条1項1号)。普通に用いられる方法とは、封筒や領収証などに「鳥飼株式会社」という語を使用することです。商品に大きく掲載したり、「株式会社」の語を省略したりすると、侵害とされる可能性があります。また、Yの商標登録より以前から「鳥飼」の名称を使用し営業している場合には、先使用権があります。いずれにしても、商号を営業に使うのであれば、商標登録をしておくのが無難です。)

 

Q8.電気製品の小売店を経営していますが、電機メーカーのブランドロゴをそのまま印刷して特売チラシを作成して近所に配布したいのですが、違法でしょうか。

A8.違法になりません。 (登録商標を複製して広告に使う場合ですから、形式的には商標権侵害にあたるとも思えますが、消費者が小売店と電機メーカーを混同するおそれが全くないため、違法になりません。)

 

Q9.アパレル事業のブランドロゴとして、私がデザインした標章を商標登録しようとしたところ、どこかでそのロゴを見たのか、そっくりそのままの形で、すでに私の知り合いの会社が商標登録をしてしまっていました。私はもうそのブランドロゴを使えなくなってしまうのでしょうか。

A9. 使えます。  (あなたがデザインしたブランドロゴの著作権はあなたに帰属します。そのブランドロゴを、後から他人が商標登録した場合でも、その他人はあなたの著作権を侵害するので使用ができず、先に生じたあなたの著作権が優先します。)

 

Q10.当社はZ国で商売をしていますが、Z国では何をするにも賄賂が必要で、当社の駐在の社員がやむを得ずZ国の税関の役人に賄賂を渡しています。日本の法律で処罰されることがあるのでしょうか。

A10.処罰される可能性がある。  (賄賂についてZ国で犯罪とされていれば、Z国で処罰されます。しかし、日本でも不正競争防止法18条に違反することになり、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられることがあります。)

 

※     どうでしたでしょうか。最近の法令や事件を取り入れた問題もあり、難しい問題もあったと思います。これまでのリスクコンシュルジュの連載を読んでいる人であれば、難なく解ける問題もありました。少なくとも10問中7問正解できれば、知財マスターと言えるのではないでしょうか。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 本田 聡

※ 本記事の内容は、2013年4月現在の法令等に基づいています。

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