連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第4回 税金を過大に申告納付していたことが発覚した場合の対応
税務に関するQ&A
第4回 税金を過大に申告納付していたことが発覚した場合の対応
Q 先日,経理担当の従業員から,3年前の事業年度である平成21年3月期につき,法人税を過大に申告し納税している可能性がある旨の報告を受けました。弊社としては,本当に過大に納税をしているのであれば,その過大分を取り戻したいところです。ただ,以前,顧問税理士より,取り戻せるのは申告期限から1年以内という話を聞いた記憶があります。弊社は過大納付分について,取り戻すことができるでしょうか。 |
A 更正の請求による取戻しはできませんが,税務署長に更正の申出書を提出することによって取り戻せる可能性があります。
[解説]
1.更正の請求とは
更正の請求とは,いったん納税者が行った申告内容について,その税額が過大であることが発覚した場合などに,税額等を自己に有利に変更すべきことを税務署長に求めることをいいます。
本件の場合も,更正の請求が可能であれば,過大申告・納付分を取り戻すべく,更正の請求をすることになります。
ただし,更正の請求のできる期間には制限があり,これを徒過した場合には,更正の請求による取戻しはできません。
2.更正の請求ができる期間
そこで,更正の請求が可能な期間が問題となるわけですが,平成23年の国税通則法の改正(「平成23年改正」)前は,法定申告期限から原則として1年以内に行うという期間制限がありました。ですから,本件のようにこの期間を徒過した場合には,更正の請求による取戻しはできませんでした。
しかし,平成23年改正により,更正の請求が可能な期間が法定申告期限から原則として5年に延長されました。(なお,法人税の純損失等の金額に係る更正の請求については9年に,贈与税に係る更正の請求については6年に延長されました。)よって,この改正法の規定が適用されれば,ご質問の場合のように法定申告期限から1年を経過している場合でも,法定申告期限から原則として5年以内であれば,更正の請求による取戻しが可能です。
ただし,改正法の更正の請求の期限の延長についての規定が適用されるのは,平成23年12月2日以後に申告期限が到来する国税についてです。したがって,残念ながら,本件ご質問の場合は,当該規定の適用対象外となります。
3.更正の申出書
では,このような場合,取り戻す方法が一切ないかというと,国税庁ホームページには,平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税について,「更正の請求の期限を過ぎた課税期間について,増額更正ができる期間内に『更正の申出書』の提出があれば,調査によりその内容の検討をして,納めすぎの税金があると認められた場合には,減額の更正を行うことになります」との記載があります。この記載によれば,増額更正ができる期間内に「更正の申出書」の提出があれば,調査のうえ過大に納付された税金があると認められた場合には,職権により減額更正がなされることになります。
よって,本件ご質問の場合にも,更正の申出書を提出することにより,過大に申告納税した分について取り戻せる可能性があるということです。
4.おわりに
いずれにしても,請求・申出の時期が重要となりますので,時期を意識した対応が必要です。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 堀 招子
※ 本記事の内容は、2012年10月現在の法令等に基づいています。
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