非営利型法人の落とし穴 ~特別の利益を与えたことがないこと~

非営利型の一般法人を選択された場合,その後の税務調査の結果によっては,法人税法上の要件を満たさないとして期せずして普通法人への移行を余儀なくされる場合がありますので,注意が必要です。

法人税法上普通法人に移行すると,法人の財務状態によっては移行時に多額の税金がかかることがありえますし,全所得課税となるので,収益事業であろうがなかろうが事業から生じた黒字分すべてに課税されることになってしまいます。

一番問題になりうる非営利型法人の法人税法上の要件は「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」を「行ったことがないこと」という要件(法人税法施行令3条1項三号)です。 この要件は「行ったことがない」と過去形になっておりますから,一度行ってしまうともう非営利型法人に戻れないものとなっているので,細心の注意が必要になります。

ではどのようなことを行なえば,「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」を行ったということになってしまうのかという点に関して,参考になるのが以下の法人税法基本通達1-1-8の規定です。

 

(非営利型法人における特別の利益の意義)

1-1-8 令第3条第1項第3号及び第2項第6号《非営利型法人の範囲》に規定する「特別の利益を与えること」とは、例えば、次に掲げるような経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なものをいう。

(1) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。

(2) 法人が、特定の個人又は団体に対し、無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。

(3) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。

(4) 法人が、特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。

(5) 法人が、特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。

(6) 法人が、特定の個人に対し、過大な給与等を支給していること。

なお、「特別の利益を与えること」には、収益事業に限らず、収益事業以外の事業において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれることに留意する。

 

ここで挙げられている例でよくありそうなものが,随分前から社団や財団の所有物である建物を貸し付けていて,賃料相場の変動により,現在においては相場と比較して低廉な賃料になってしまっているにもかかわらず,全く賃料を改訂していないといったもの((1)の例)や,親族に法人の役員として名前だけ借りて報酬まで支払っているといったもの((6)の例)です。 法人の側で特別の利益を与えているとの意識がなくても,うっかりしてこういった例に触れることがありえますので注意が必要です。

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