税理士賠償責任 税理士法改正・税理士補佐人制度の創設 平成13年7月

一  税理士法改正・税理士補佐人制度の創設

 このたびの税理士法改正により、税理士補佐人制度が創設されました。
 本コンテンツのタイトルである税理士賠償責任とは直接関係しないようにも思われるこの制度ですが、実はそうではありません。補佐人として訴訟に携わると、「立証」がいかに大切かということが身をもってわかります。すると、通常の税理士業務においても、自然に「立証」という視点で物事を処理し考えるようになります。これは、いざ訴訟になったとき勝敗の決め手となる「証拠」を日々固めていくことを意味します。これにより、かなりの程度で税理士賠償責任を追及される可能性を低減させることができます。つまり、税理士補佐人制度の利用は、税理士の日常業務自体にも大いに生かされてくるわけです。
 そこで今日は、この税理士補佐人制度の概要を説明させて頂きたいと思います。


 税理士補佐人制度の概要

 税理士補佐人制度とは、税理士が、租税に関する事項について、裁判所の許可を必要とせず、裁判所において「補佐人」として弁護士である訴訟代理人とともに出廷し陳述できることとする制度です(税理士法2条の2 I)。

1 「補佐人」とは

 「補佐人」とは、当事者または代理人とともに期日に出頭し、これらの者の陳述を補足する者をいいます(民事訴訟法60条)。「補佐人」は、自己の意思に基づいて訴訟上の陳述をなし、その効果が本人に帰属するため、その性質は代理人の一種であるといわれています。
 補佐人のした陳述は、当事者又は訴訟代理人がそれを直ちに取消しまたは更正しない限り、その効果が本人に及びます(税理士法2条の2 II)。
 

裁判所の許可は不要

 これまで、税理士が、民事訴訟法上の「補佐人」となるには、裁判所の許可が必要でした。ところが、これまで裁判所は、訴訟代理人である弁護士に「税理士資格」があることなどからこれを却下してきました。しかし、今回の改正で裁判所の許可は不要となりました。税理士が出廷し陳述するための大きな壁が、これによって除去されたわけです。
 

訴訟代理権まではない。

 今回の改正では、訴訟代理人すなわち弁護士がついている訴訟に限り、 税理士の出廷陳述権が認められています。これには賛否両論ありますが、訴訟を遂行するためには、訴訟法の知識や技術が必要であること等がその理由とされているようです。


 税理士補佐人制度の有効活用を。

 訴訟代理権をもつ弁護士は、必ずしも税法に精通しているわけではありません。むしろ、税法を専門分野とする弁護士は非常に少ないのが現状です。
 ところが、言うまでもなく、税法というものは相当の専門知識を必要とします。税務訴訟の場合は、税務署長などを相手取って訴訟を起こすわけですが、被告である国側には、税務訴訟の専門官である「訟務官」などがついています。つまり、原告当事者と被告である国側には歴然とした力の差があるわけです。
このような現状では、多くの納税者は不利な立場に立たざるを得ません。今回の税理士法改正で、税理士補佐人制度が創設された背景には、このような実態があるわけです。
 税務訴訟は、通常訴訟に比べ、件数も勝訴率も低いのが現状です。しかし、税理士補佐人制度が活用されるようになれば、徐々にこれらの数字は変わってくることでしょう。
 そして、最初に述べましたように、この制度の活用によって訴訟の実際を知ること、とりわけ「立証」ということを肌で体験することは、必ずや税理士の日常業務の発展にも大いに貢献するに違いありません。

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