鳥飼総合法律事務所

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【印紙税】不動産取引に必須の印紙税の知識(29)【最終回】―総復習(後編)―

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投稿者
沼野友香
取扱分野
税務
鳥飼総合法律事務所
 

 

 

 公益財団法人不動産流通推進センター「月刊 不動産フォーラム21」で連載をしております。2020年2月号の記事を掲載致します。

その他の記事はこちらの書籍執筆、雑誌連載のご案内をご覧ください。


不動産取引に必須の印紙税の知識(29)

―総復習(後編)―

沼野 友香

鳥飼総合法律事務所弁護士

鳥飼総合法律事務所印紙税相談室所属

監修:鳥飼重和

 

[ぬまの・ゆか]鳥飼総合法律事務所弁護士。中央大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。 (株)日本経営税務法務研究会主催、新日本法規出版(株)協賛による「印紙税検定(初級篇)®」の立ち上げに参画、「印紙税検定(中級篇)®」の講師を務める。鳥飼総合法律事務所印紙税相談室の創設メンバー。(email:inshi-zei@torikai.gr.jp)

 

1 まえがき

 2017年10月よりスタートした本連載も今回で最後になりました。今回は総復習(後編)ということで、これまで連載で取り上げたテーマのうち特に重要なものについて、再度解説をします。

 

2 契約書を2通以上作成した場合

 印紙税は、契約が成立したことに対して課されるのではなく、契約の成立等を証明する目的で文書を作成したことに対して課されます。したがって、成立した契約が1つでも、契約の成立を証明する目的で文書を2通作成すれば2通に、3通作成すれば3通に印紙を貼らなければなりません。したがって、例えば、仮契約書を作成したうえで、後日、本契約書を作成する場合には、仮契約書と本契約書の両方に印紙を貼る必要があります。

 なお、印紙を貼る必要があるのは原本のみで、その写しに印紙を貼る必要はありません(ただし、写しに契約当事者双方の署名押印がある場合や原本証明等がされている場合には、契約の成立等を証明する目的で作成された文書といえるため課税される点に注意が必要です。)。

 この点は、本連載第2回で解説をしました。

 

3 変更契約書の取扱い(契約金額の増額減額)

 印紙税は契約の成立の事実を証明する目的で作成する契約書のみに課されるものではなく、契約の更改、契約の内容の変更または補充の事実を証明する目的で作成され、かつ、各文書の重要な事項を定めるものにも課されます。したがって、例えば、請負契約の契約金額の増額や減額を約する契約書は重要な事項である契約金額を変更する契約書に当たりますので、印紙税法上の契約書になります。

 そして、変更契約書の記載金額については、①変更前の金額の記載のある文書が作成されていることが明らかで、かつ、②変更契約書に変更金額が記載されている場合には、契約金額が増加するときはその増加金額が記載金額となり、契約金額が減少するときには記載金額がないものとなります。変更前の金額の記載のある文書が作成されていることが明らかでない場合や、変更後の契約金額のみが記載されていて、いくら増減したか明らかでない場合には、変更後の契約金額に応じた印紙を貼る必要がありますので、注意が必要です。

 変更契約書については、本連載第4回で解説しました。

 

4 請負に関する契約書(第2号文書)

(1)請負と委任

 請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することにより効力を生ずる契約をいいます。請負の特徴は、契約の目的が仕事を完成させることにある点です。

 その他、第三者に業務を委託する契約としては「委任」があります。委任とは、当事者の一方が法律行為や事務処理を相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約をいいます。

 請負も委任も、ともに役務を提供して業務を行い、委託者の指揮命令を受けないという点で共通していますが、その違いは、請負が仕事の完成を契約の目的としているのに対し、委任は事務を処理すること自体が契約の目的とされている点にあります。両者の区別は難しく感じられると思いますが、個々の文書の内容をよく見て契約の目的が何であるかにより判断することになります。一般に、委託者が受託者の専門的知識、経験、技術等を信頼して業務を委託する場合、受託者自身が業務を遂行することが契約の目的となっており、委任契約に該当すると考えられています。

 請負と委任については、本連載第7回、第8回で解説しました。

(2)請負と売買

 売買とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生ずる契約をいいます。売買の特徴は、契約の目的が目的物の所有権を移転することにある点です。

 ある契約が請負なのか売買なのかは、基本的には、その契約の目的が仕事の完成なのか(請負)、目的物の所有権移転なのか(売買)により区別することになります。すなわち、契約当事者の意思が仕事の完成と財産権の移転のどちらに重きを置いているのかを文書の記載から客観的に判断する必要があります。

 具体的な判断方法については、以下の判断基準を参考にしてください。

 請負と売買については、本連載第9回で解説しました。

 

表1 請負契約か売買契約かの判断基準(国税庁HP質疑応答事例2号文書の2)

 

内 容

請負契約

注文者の指示に基づき一定の仕様または規格等に従い、製作者の労務によって工作物を建設することを内容とするもの

・家屋の建築

・道路の建設

・橋りょうの架設

注文者が材料の全部または主要部分を提供(有償、無償を問わない。)し、製作者がこれによって一定物品を製作することを内容とするもの

・生地提供の洋服の仕立て

・材料支給による物品の製作

製作者の材料を用いて注文者の設計または指示した規格等に従い一定物品を製作することを内容とするもの

・船舶、車両、機械、家具等の製作

・洋服等の仕立て

一定の物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするもの

・大型機械の取付け

修理または加工することを内容とするもの

・建物・機械の修繕、塗装

売買契約

一定の物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするものであるが、取付行為が簡単であって、特別の技術を要しないもの

・家庭用電気器具の取付けや配線

製作者が工作物をあらかじめ一定の規格で統一し、これにそれぞれの価格を付して注文を受け、当該規格に従い工作物を製作し、供給することを内容とするもの

・建売住宅の供給(不動産の譲渡に関する契約書)

あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し、供給することを内容とするもの

・カタログまたは見本による機械、家具等の製作

 

5 継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)

 継続的取引の基本となる契約書とは、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となる契約書を意味します。同一当事者間で同種の取引が反復継続して行われる場合には、その取引に共通して適用される基本事項をあらかじめ基本契約書として定めておき、個々の取引に関しては契約書の作成を省略または簡略化することがよく行われていますが、この場合の基本契約書が第7号文書の対象となる継続的な取引の基本となる契約書に当たります。したがって、継続的な取引の基本となる契約書は、個々の取引においてその都度作成される個別契約書とは区別されます。

 第7号文書に該当する契約書の範囲については、印紙税法施行令26条に5つの類型が定められていますが、このうちよく問題となるのが、売買、売買の委託、運送、運送取扱い、または請負を継続的な取引の対象とする類型です。この類型に該当し、第7号文書に該当する文書の要件としては、以下の6つが挙げられます。

①    契約期間の定めがないか、契約期間が3か月を超えるか、3か月以内でも期間の更新に関する定めがあること

②    営業者の間の契約について作成されるものであること

③    売買、売買の委託、運送、運送取扱い、または請負に関する契約書であること

④    2以上の取引を継続して行うための契約書であること

⑤    2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書であること

⑥    電気またはガスの供給に関する契約書でないこと

 

 また、売買、売買の委託、運送、運送取扱い、または請負の継続的取引の基本となる契約書のうち、売買に関するもので不動産等を対象とするもの、運送に関するもの、請負に関するものについては、それぞれ第1号文書または第2号文書にも該当することになるため、所属の決定が必要になります。この場合、記載金額のあるものは第1号文書または第2号文書に、記載金額のないものは第7号文書に所属が決定することになります。

 継続的取引の基本となる契約書については、本連載第24回、25回で解説しました。

 

6 まとめ

 長期にわたり連載をさせていただきました「不動産取引に必須の印紙税の知識」も今回をもちまして最後となりました。不動産取引に携わる読者の皆様が、日頃から印紙税について疑問に思っていることを解消できたり、反対に疑問に思わず定型的に行っている業務を改めて見直したりするきっかけになればと思い、毎回連載をしてきました。この連載で扱った印紙税のテーマは多岐にわたりますので、読者の皆様は相当な印紙税の知識をお持ちになられたのではないでしょうか。それでも判断に迷うときはお気軽にお問合せください。

ご愛読いただきまして、ありがとうございました。

以上

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