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【印紙税】不動産取引に必須の印紙税の知識(24)―継続的取引の基本となる契約(第7号文書)(1)―

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投稿者
沼野友香
取扱分野
税務
鳥飼総合法律事務所
 

 

 

 

 

 

公益財団法人不動産流通推進センター「月刊 不動産フォーラム21」で連載をしております。2019年9月号の記事を掲載致します。

その他の記事はこちらの書籍執筆、雑誌連載のご案内をご覧ください。


不動産取引に必須の印紙税の知識(24)

―継続的取引の基本となる契約(第7号文書)(1)―

沼野 友香

鳥飼総合法律事務所弁護士

鳥飼総合法律事務所印紙税相談室所属

監修:鳥飼重和

 

 [ぬまの・ゆか]鳥飼総合法律事務所弁護士。中央大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。 (株)日本経営税務法務研究会主催、新日本法規出版(株)協賛による「印紙税検定(初級篇)®」の立ち上げに参画、「印紙税検定(中級篇)®」の講師を務める。鳥飼総合法律事務所印紙税相談室の創設メンバー。(email:inshi-zei@torikai.gr.jp

 

1 まえがき

 今回と次回は、継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)について解説をします。

「継続的取引の基本となる契約書」と聞くと、文字どおり、継続する取引の基本となる事項を定める契約書のことをいうのだろうと想像されると思います。もっとも、印紙税法の定める「継続的取引の基本となる契約書」は、このうちある一定の要件を満たすものに限られます。したがって、第7号文書の要件に該当するかを順に検討する必要があります。

 また、「継続的取引の基本となる契約書」は、不動産譲渡契約書(第1号の1文書)や請負契約書(第2号文書)などとは異なり、「継続的取引の基本となる契約書」という名称の契約書の類型が存在するものではないことから、他の課税文書よりも課否判断が難しいという側面もあります。

 今回と次回の連載では、第7号文書のうち、実務上よく問題となる売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負に関する契約書に焦点を絞り、これらの文書の課否判断の手順と判断における3つのポイントについて解説をしていきます。この機会に第7号文書の課否判断のポイントをつかんでいただければと思います。

 

2 ポイント1「継続的取引の基本となる契約書であること」

 継続的取引の基本となる契約書は、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となる契約書を意味します。

 同一当事者間で同種の取引が反復継続して行われる場合には、その取引に共通して適用される基本事項をあらかじめ基本契約書として定めておき、個々の取引に関しては契約書の作成を省略または簡略化することがよく行われていますが、この場合の基本契約書が第7号文書の対象となる継続的な取引の基本となる契約書に当たります。

 したがって、継続的な取引の基本となる契約書は、個々の取引においてその都度作成される個別契約書とは区別されます。当該契約の締結により直ちに個別の契約が成立し、当事者双方に権利義務が発生するものは、個別契約に当たります。個別契約書の場合、運送に関する契約書であれば第1号の4文書に、請負に関する契約書であれば第2号文書に該当しますが、第7号文書には該当しません。

 

3 ポイント2「契約期間が3月を超えること」

 継続的取引の基本となる契約書では、当該文書に契約期間の定めがあるか否か、定めがある場合にはその期間が3か月を超えるか否かを検討する必要があります(期間的要件)。第7号文書の期間的要件を整理すると次のようになります。次のいずれかに該当する場合には、第7号文書の期間的要件を満たします。

ア 契約期間の定めのないもの

イ 3か月を超える契約期間の定めのあるもの

ウ 3か月以内の契約期間が定められているが、更新の定めが併せて記載されているもの

(当初の契約期間に更新後の期間を加えてもなお3か月以内であるものを除く。)

 

4 ポイント3「印紙税法施行令26条の契約類型に当たること」

 上記3で解説した期間的要件は、印紙税法の別表第1課税物件表に記載されているものですが、第7号文書に該当する契約書の範囲については、印紙税法施行令26条にも定められています。印紙税法施行令26条に定められている契約書の類型は次のとおりです。

ⅰ)売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負の特約店契約書など

ⅱ)売買に関する業務、金融機関の業務などの代理店契約書など

ⅲ)金融機関に対する包括的基本契約書など

ⅳ)商品先物取引業者等との信用取引口座設定約諾書など

ⅴ)損害保険会社と保険契約者との保険特約書など

 このうち、よく問題となるのが、ⅰの特約店契約書の類型の売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負に関する基本契約書です。そこで、以下ではこの類型の契約書について解説をしていきます。

 ⅰの類型に該当し、第7号文書に該当する文書の要件としては、以下の6つが挙げられます。2で解説をした内容は④の要件と同趣旨になります。3で解説をした期間的要件は①に当たります。

①    契約期間の定めがないか、契約期間が3か月を超えるか、3か月以内でも期間の更新に関する定め 

  があること

②    営業者の間の契約について作成されるものであること

③    売買、売買の委託、運送、運送取扱い、または請負に関する契約書であること

④    2以上の取引を継続して行うための契約書であること

⑤    2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方

  法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書であるこ

  と

⑥    電気またはガスの供給に関する契約書でないこと

 したがって、ある文書が第7号文書に該当するか否かについては、上記①から⑥の要件を充足するか、順に検討していくことになります。

 

5 事例1(2以上の取引を継続して行うための契約書であること)

 では、事例を用いて第7号文書の課否判断をしてみましょう。図1の文書は第7号文書に該当するでしょうか。

 

図1 プログラム開発請負契約書

プログラム開発請負契約書

 甲株式会社(以下、甲)と乙株式会社(以下、乙)は、以下に定めるプログラムの開発に関し、次のとおり請負契約(以下、本契約)を締結する。

第1条          甲は、プロジェクトTLOにおけるプログラムの開発を乙に委託し、乙はこれを受託した。

     (1)  プログラムの詳細 別紙

     (2)  納期 第1回中間成果物納期 令和元年10月31日

             第2回中間成果物納期 令和元年12月15日

             最終成果物納期    令和2年3月31日

     (3)  委託料総額 500万円

         内、 第1回中間成果物   150万円(支払日:令和元年11月29日)

            第2回中間成果物   150万円(支払日:令和2年1月31日)

            最終成果物      200万円(支払日:令和2年4月30日)

第2条          乙は、前条に定める納入期日までに、本業務の各成果物を納入するものとする。

     甲は、乙による成果物の納入後、5日以内に検査する。本業務は、これらの検査の結果、

     甲が本成果物を完成と認め、乙に対してその旨報告書の発行により検収を通知したときに

     完了する。

第3条          甲は、乙に対して、本業務が完了していることを条件に、第1条に定める委託料を支払う

     ものとする。

第4条          甲は、乙に対し、第1条に定める委託料を、乙から請求書を受領することを条件に、第1条

     に定めるとおり支払うものとする。

第5条          本契約の契約期間は、令和元年9月1日より甲が乙に対する委託料の支払いを完了したとき

     までとする。

     (以下略)

 

 図1の契約書は、いずれも株式会社である甲乙間の請負に関する契約書です(②③)。また、契約期間は、第5条より、令和元年9月1日より最終成果物に対する支払日である令和2年4月30日までは少なくとも続くものですから、3か月以上の契約期間を定める契約書に該当します(①)。取引条件のうち、目的物の種類、対価の支払方法の記載があり(⑤)、電気またはガスの供給に関する契約書ではありません(⑥)。

 問題となるのは、本契約が2以上の取引を継続して行うための契約書(④)に当たるか、すなわち、個別契約と区別される継続的取引の基本となる契約書に該当するかという点です。

 図1は、プロジェクトTLOにおけるプログラムの開発請負というある特定されたプログラムの開発請負に関する契約書です。また、契約書の記載内容からしても、この契約の締結により直ちに個別の契約が成立し、甲乙の権利義務が発生するものです。納期や支払日が3回に分かれていますが、これはあくまでも1個の請負契約の成果物の納期を段階に応じて分けたものであり、これをもって2以上の取引であると考えることはできません。

 よって、図1の文書は個別契約を定めるものであり、「2以上の取引を継続して行うための契約書であること」という④の要件を満たしません。したがって、図1の文書は第7号文書には該当しません。

 もっとも、図1の契約書は個別の請負契約として第2号文書に該当し、契約金額500万円に応じた2,000円の印紙を貼る必要があります。

6 まとめ

 次回も引き続き事例を用いて第7号文書に関する解説をいたします。ぜひご期待ください。

 

 

以上

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