鳥飼総合法律事務所

Facebook Twitter

連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第94回 所得税では事業的規模の不動産業者とされず青色申告特別控除が受けられないのに,消費税は事業者としてしっかり課税されるのはおかしくないですか!

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
税務
 

 

所得税では事業的規模の不動産業者とされず青色申告特別控除が受けられないのに,消費税は事業者としてしっかり課税されるのはおかしくないですか!

 

Q 消費税は事業者が行った資産の譲渡等に課税されると伺っています。私は,個人所有の倉庫を会社に貸し付けていますが,所得税においては私の不動産貸付けは事業的規模とはいえないと扱われています。それなのに,消費税は事業者としてしっかり課税されています。同じ税法で消費税法では事業者として扱われ,所得税法では事業的規模で不動産貸付けを行っているとは扱われないなんて,課税庁のいいとこ取りでおかしくないですか?

 

A おかしくはございません。消費税法と所得税法は同じ税法ではありますが,そこで着目されている担税力や課税対象は異なっています。従いまして,このような性質の異なる両法の規定中に同一文言があるからといって,直ちに,それを同一に解釈すべきであるということにはなりません。消費税法は,消費に広く負担を求めるという観点から制定されていることからすれば,消費税法の「事業」の意義内容は,所得税法上の「事業」概念と異なり,その規模を問わず,「同種の行為を反復・継続・独立して行われる」ものであればよいと解されています。

 

 [解説]

1.所得税法上の「事業」と消費税法上の「事業」

 所得税法においては不動産所得にあたる不動産の貸付けによる所得について,「事業」的規模にあたるか否かで,賃貸用固定資産の取壊し等の資産損失(所得税法51条),青色申告の事業専従者給与(同57条),賃貸料の回収不能による貸倒損失(同64条)等の取扱いに差異を設けています。  

 所得税法で「事業」的規模にあたらないとされれば,そのまま消費税法の納税義務者である「事業」者にあたらないとして取り扱ってもよいのでしょうか。 

 この点,消費税法は,消費税の課税対象について,「国内において事業者が行った資産の譲渡等には,この法律により,消費税を課する。」と規定しています(4条1項)。

 しかし,消費税法は,「事業者」につき「個人事業者及び法人をいう。」(2条1項4号)とし,さらに「個人事業者」につき「事業を行う個人をいう。」(2条1項3号)とそれぞれ定義し,併せて,「資産の譲渡等」について,「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(中略)をいう。」と定義している(2条1項8号)ものの,「事業」自体の一般的な定義規定を置いてはいません。

 そこで,「事業」の意義については,消費税法の制定趣旨及び目的等に照らして解釈することになります。

 

2.消費税法の制定趣旨と目的

 消費税とは,一般的に,物品やサービスの消費支出に担税力を認めて課される租税をいうものであって,国民に対し,消費支出に現れる経済的な負担能力に応じた負担を求めるものです。そして,我が国の消費税法は,消費に広く負担を求めるという観点から(税制改革法10条1項),消費一般につき,価格を通して最終的に消費者に転嫁されることを予定し,消費に至るまでの各段階に課税するものとして創設されました(税制改革法10条1項,2項)。具体的には,課税対象を,国内で事業者が対価を得て行った資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(消費税法4条)としてその範囲を広く定め,課税の対象から除外される物品や役務等について,限定的に列挙されています(消費税法6条)。  このように,消費税法は,徴税技術上,納税義務者を物品の製造者や販売者,役務の提供者等としているものの,その性質は,その相手方である消費者の消費支出に着目したもので,これを提供する事業者の規模そのものは,消費税法が課税を意図する担税力と直ちに結びつくということはできません。

 

3.所得税法の着目する担税力と課税対象

 これに対して,所得税は,一般的に,担税力の現れとして,人が収入等を得ていることに着目し,収入等の形で新たに取得する経済的利得即ち所得を,直接対象として課されるものです。そして,所得税法は,利得をすべて課税対象たる所得とすることを前提に,その性質や発生の態様によってそれぞれの担税力の相違を加味する趣旨で,その源泉ないし性質に応じて,所得を10種類に分類する(所得税法23条ないし35条)などしています。

 

4.趣旨・目的の違いからくる異なる帰結  このように消費税法と所得税法とは,着目する担税力や課税対象を異としていますので、性質の異なる両法の規定中に同一文言があるからといって,直ちに,それを同一に解釈すべきであるということにはなりません。上述のとおり,消費税法が,消費に広く負担を求めるという観点から制定されたこと(税制改革法10条1項)に照らせば,その課税対象を,所得税法上の「事業」と同一の範囲における資産の譲渡等に限定しているものと解することはできません。上述の消費税の趣旨・目的に照らせば,消費税法の「事業」の意義内容は,所得税法上の「事業」概念と異なり,その規模を問わず,「同種の行為を反復・継続・独立して行われる」ものであると解されています。

 

 従いまして,所得税法上は事業的規模で不動産貸付けを行っていないとみなされながら,消費税は事業者として扱われることは何らおかしなことではないのです。同じ税法の中で用いられている用語であっても,その法律の趣旨・目的によって具体的な意味内容や想定している範囲が異なってくることはよくあることです。具体的な法の適用の場面では,その用語が用いられている法律の趣旨・目的からすればどのような意味ととるのが適切なのかまで考えるくせをつけましょう。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 西中間 浩

 

 

※ 本記事の内容は、執筆現在の法令等に基づいています。

※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。

 

上へ

メールマガジン登録