鳥飼総合法律事務所

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連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第92回 審査請求と再調査の請求

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
税務
 

審査請求と再調査の請求

Q 解雇無効等を争う裁判を提起した元従業員に対し未払給与の支払を命じる第1審の判決が当社に言い渡され,仮執行宣言に基づき強制執行を受けたのですが,「強制執行で回収されたものについても源泉徴収義務がある」と税務署から指摘を受けました。

支払の際に天引きすることができないにもかかわらず,当社に源泉徴収義務が生じるのでしょうか。

 

A 給与等の支払をする者には,源泉徴収義務が課せられています。具体的には,所得税法28条1項(給与所得)に規定する「給与等」の「支払をする者」は,その支払の際に,所得税(源泉所得税)を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までにこれを納付しなければならないとされています(所得税法183条1項)。

  このケースでは解雇した元従業員との間に労働関係についての訴訟があったようですが,未払給与があったことが認定されその支払を命じる判決が第1審で下されたとのことです。確定判決ではなくても,仮執行宣言が判決で言い渡されている場合,これに基づき強制執行を行うことが法律上は可能です。こうして強制執行により回収された未払賃金であるため,雇用契約に基づき労務の対価として使用者から受ける給付(所得税法28条1項。最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁参照)にあたることは仕方ないとしても,天引きをすることができずに源泉所得税相当額も含まれた金額を回収されたことから点については,疑義と唱えたいところでしょう。支払時に天引きができない点を強調すると,仮に強制執行による未払賃金の回収が「支払」にあたるとしても,「支払の際に……徴収」することはできなかった以上,源泉徴収義務を負わせるべきではないと考えることもできます(高松高判昭和44年9月4日高民集22巻4号615頁参照)。

  しかし,最高裁は,天引きをしなかった場合でも,給与支給者(通常は会社)は受給者(この場合は元従業員)に対し,事後的に求償権を行使し,源泉所得税相当額の支払を求めることができる以上(所得税法222条),強制執行による回収の場合にも「支払」にあたり,源泉徴収義務を負うとの判断をしています(最判平成23年3月22日民集65巻2号735頁)。

  したがって,この場合も源泉徴収義務が生じることになります。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 木山 泰嗣

※ 本記事の内容は、執筆現在の法令等に基づいています。

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