連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第79回 労働紛争の「解決金」にご注意

労働紛争の「解決金」にご注意

 

Q.当社は、10年間勤めた経理課長(A)の度重なる社内トラブルを原因として、Aを解雇しました。そうしましたところ、Aが労働審判の申立を行い、結局、当社が300万円の解決金を支払うことで合意しました。
この解決金ですが、当社は、「解決金」として、費用計上してしまってよろしいでしょうか。

 

A.御社が支払われた「解決金」の中身を詳しく見た上で、その性質を決定していくことになりますから、単純に費用として計上できる場合だけでないことに注意が必要です。

 

【解説】

1.労働審判

 トラブルを起こす従業員を解雇して、その元従業員から労働審判を申し立てられるということが多く起きています。これは、労働審判が、①専門性、②迅速性、③柔軟性という特徴をもっているからであるともされています。

 

2.解決金

 労働審判では、事業者が、ある一定の金員を元従業員に支払うという内容で合意するケースが多いのですが、この際に作成される書面では、その内訳を詳細に書くことなく、「解決金として○○円を支払う」という一文で済ましてしまうことが殆どです。

 

3.解決金と税金

 一口に「解決金」といいましても、その内容はまさに千差万別であり、税法上は、解決金の中身を実質的に判断してその取扱いが決まってきます。

   たとえば、その一部が、未払いの給与や賞与の補てんと認められる部分については給与所得となりますから、事業者側では源泉徴収の必要が発生しますし、もし慰謝料的な要素を含む金員が含まれているということですと、元従業員側では非課税となるケースもあろうかと思います。

 労働紛争の場合には、一つ一つのケースで、その実態が異なりますから、単に書面に「解決金」と書かれているからといって、単純に費用の額としてしまうことには注意が必要です。

 

鳥飼総合法律事務所

税務部長 高田貴史

※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。

※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。

関連するコラム