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連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第77回 マイナンバーの実務 ~扶養控除等申告書~

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
税務
 

マイナンバーの実務 ~扶養控除等申告書~

 

Q 扶養控除等申告書にマイナンバーを記載しないことは可能でしょうか。その場合の留意点はどのようなものでしょうか。

 

A 国税庁のFAQに従えば、マイナンバーそのものは別途収集管理したうえで、個々の扶養控除等申告書には、マイナンバーを記載せず、「個人番号については給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」などの記載をする扱いが認められます。この場合、別途収集管理しているマイナンバーの廃棄のタイミング等には注意が必要です。

 

1.扶養控除等申告書の法的位置付け

国内において給与等の支払を受ける居住者(たとえば日本に住んで給与を受け取る従業員など)は、その給与等の支払者から毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、一定の事項を記載した申告書を、「給与等の支払者を経由して」、所轄税務署長に提出しなければならないとされています(所得税法194条1項)。その記載事項には、平成28年1月1日以降、従業員本人や控除対象配偶者、控除対象不要親族等のマイナンバーが含まれています。

「給与等の支払者を経由して」税務署長に提出する、というのは、従業員は給与の支払者である会社に対して扶養控除等申告書を提出し、これを会社が税務署にまとめて提出するという意味です。しかし実際は、会社が受理した申告書は、税務署長が提出を求めるまでの間、会社が7年間保存することになっています(施行規則76の3)。

扶養控除等申告書を提出した従業員は、給与等の源泉徴収税額の算定が、いわゆる別表2の乙欄でなく甲欄の適用となり、要するに源泉徴収税額が低くなります(所得税法185条)。さらに、給与等の金額の上限に抵触しないなどの諸要件を満たす限り、年末調整の対象となり、確定申告が不要になるなどの大きな効果があります(同法121条、190条)。

 

2.扶養控除等申告書にマイナンバーを記載しない方法

 マイナンバー法は、マイナンバーを保管する事業者に厳格な安全管理措置を要求しています。マイナンバー法に違反しない最善の策は、「なるべくマイナンバーの記載された書類を作らない、持たない。」ということだと思います。

しかし、扶養控除等申告書は、上記の通り会社(事業者)が保管する義務を負うため、そこにマイナンバーの記載があるときは、安全管理措置の対象となります。しかも、法定保管期限を過ぎたときは廃棄する義務も課されるので、毎年増える扶養控除申告書を、それぞれにつき、7年経過後に破棄する仕組みを構築するなどの難しい対応が迫られます。管理部門が手薄な中小企業などではかなりハードルが高いように思われます。

 そのためか、国税庁は、扶養控除等申告書に事実上マイナンバーを記載しないで済ませる方法を認めました。

 すなわち、会社と従業員の間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「個人番号については給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」旨を記載した上で、会社において、既に提供を受けている従業員等のマイナンバーを確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等のマイナンバーの記載をしなくてもよいとされています。ただし、会社において保有しているマイナンバーと扶養控除等申告書に記載が省略されたマイナンバーについては、適切かつ容易に紐付けられるよう管理しておくことが求められます(源泉所得税関係に関するFAQ1-9)。

 この方法を採用する場合、会社は、たとえば従業員からマイナンバーを収集して、マイナンバー管理簿のようなものを作成し、安全管理措置のもとで保管します。管理簿には、マイナンバーのほか、対応する者の住所氏名など適宜の識別情報を記載します。そうすれば、扶養控除等申告書にはマイナンバーの記載がなくとも、識別情報を基礎として、容易に該当するマイナンバーを検索できるでしょう。

 

3.廃棄について  なお、保有するマイナンバーについては、個人番号関係事務に必要がなくなったとき及びマイナンバーを記載すべきであった扶養控除等申告書の保存年限を経過したときには、速やかに廃棄又は削除しなければなりません。  一般的には、マイナンバー管理簿のようなものを作成している場合、当該従業員が退職した時点で、記載したマイナンバーは今後必要なくなるので、削除しなければなりません。しかし、上記2の方法で扶養控除等申告書の記載をマイナンバー管理簿に代替させている場合は、当該従業員について預かっているすべての扶養控除申告書の法定保管期限が過ぎるまでは、管理簿上の記載も削除しないこととなりますので注意が必要です。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 島村 謙

 

 

※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。

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