連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第73回 固定資産税の価格についての不服申立て

固定資産税の価格についての不服申立て

 

Q 会社が所有する不動産について、固定資産の価格として固定資産課税台帳に登録された価格が、他の不動産と比較して不当に高いのではないかと思います。これに不服がある場合、どうすればいいでしょうか。

 

A 固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合には、各市町村の固定資産評価審査委員会に対して、審査の申出をすることができます。ただし、審査の申出ができる期間には制限があります。

 

(解説)

固定資産とは土地・家屋・償却資産で、これらを課税物件として課される税が固定資産税です。固定資産税は、毎年1月1日を税を賦課する基準の日とし、固定資産課税台帳に登録された内容にしたがって賦課されます。

固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格等は、市町村長が毎年3月31日までに決定して、直ちに固定資産課税台帳に登録し、その旨を公示しなければならないこととされています。

 

この固定資産課税台帳に登録された価格について不服のある納税者は、固定資産の価格等の登録の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日以内に、固定資産評価審査委員会に、審査申出書を提出して、審査の申出をすることができることになっています。

土地と家屋は、基準年度の評価額が、2年度及び3年度にも据え置かれるのが原則ですので、その場合には、基準年度においてだけ審査の申出ができます(2年度及び3年度に新たに登録された土地・家屋、評価替えのあった土地・家屋については、当該年度に審査の申出をすることができます。)。

 

なお、平成26年の行政不服審査法の改正に伴い地方税法が改正され、固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出期間は、固定資産の価格等の固定資産課税台帳への登録の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3か月以内(現在は60日以内)に、延長されることになりました。改正地方税法の施行日は、行政不服審査法の施行日(同法の公布の日である平成26年6月13日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日)から施行されることになります。

 

固定資産評価審査委員会に審査の申出ができる者は、固定資産の納税者に限られ、審査の申出をすることができる事項は、固定資産課税台帳に登録された価格に限られています。

したがって、価格以外の賦課に関する事項(例えば、税額についての不服など)については、審査の申出の対象ではなく、行政不服審査法の不服申立の対象となります。

 

固定資産評価審査委員会は、形式審査、実質審理を経て、審査の決定を行いますが、この決定に不服がある納税者は、取消訴訟を地方裁判所に提起することになります。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 佐藤香織

 

※ 本記事の内容は、平成27年10月末現在の法令等に基づいています。

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