鳥飼総合法律事務所

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連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第70回 外国事業体の法人該当性判断基準

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
税務
 

外国事業体の法人該当性判断基準

Q 当社は,国外投資をするにあたり,リスクを限定するため,直接投資ではなく,外国事業体を通じた間接投資を検討しています。外国事業体は会社以外に,リミテッド・パートナーシップ(LPS)やリミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)なども想定されますが,課税上,外国事業体が「法人」として扱われるか否かの判断基準を教えてください。

 

A 外国事業体の法人該当性を判断するための判断基準は,次の2つです。

① 外国事業体が外国法令で日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることまたは付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否か

② ①ができない場合に,外国事業体が,権利義務の帰属主体であると認められるか否か(外国事業体がみずから法律行為の当事者となることができ,かつ,その法律効果がその事業体に帰属すると認められるか否か)

 

(解説)

1. 最高裁平成27年7月17日判決

上記の法人該当性の判断基準は,最高裁判所の平成27年7月17日判決の判示です。

最高裁判所は,「納税者とされる者の範囲は客観的に明確な基準により決せられるべきである」と考え,「ある組織体が権利義務の帰属主体とされることが法人の最も本質的な属性であ」ることから,「権利義務の帰属主体」と認められるか否かをその基準としました。

一方で,諸外国の制度と我が国の制度との相違や国際的な法制の調和の要請等を踏まえ,「日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることが疑義のない程度に明白であるか」という①の基準によっても判断することとしています。

しかし,どのような場合が,「疑義のない程度に明白」といえるのかについて何ら判示しておりませんので,最終的には「権利義務の帰属主体」と認められるか否かを判定するほかないと思われます。

今後,この判定にあたっては,外国事業体に係る当該外国の設立根拠法における規定,契約内容,さらに事実関係等から判断せざるを得ず,場合によっては,納税者においても,課税当局においても困難を伴う場合も生じることが想定されます。

 

2.「法人」に該当する外国事業体

 上記基準に基づき,「法人」に該当されると判定された最高裁判決の事案は,米国デラウェア州で組成されたLPSです。また,高裁レベルですが,東京高裁平成19年10月10日判決では,米国ニューヨーク州で組成されたLLCについても,「法人」に該当するとの判断がされています。

 日本の株式会社に相当する米国のcorporationなど,権利義務の帰属主体であることが明らかであれば,当然に「法人」に該当します。

 

3.「法人」に該当しない外国事業体

  これに対し,上記最高裁判決と同日に上告が不受理決定された(最高裁判所に受理されずに確定した)事案では,英領バーミューダのLPSが「法人に該当しない」と判断されています。

  同様に,ケイマンのLPSも「法人に該当しない」ことを前提に,所得区分が争われた裁判例があります(名古屋高裁平成19年3月8日判決)。

 

4.まとめ

外国事業体の法人該当性については,上記のとおり,同じ“LPS”という名称であっても設立根拠法が異なれば,その判定も異なる場合があります。

課税関係を不安定にしないためには,既に判断が示されている外国事業体を利用することが確実な方法です。

投資環境や投資地域等により,まだ判断が示されていない外国事業体を用いる場合には,弁護士等の専門家に調査を依頼するなどして,「権利義務の帰属主体」となるか否かを判定したうえで利用するのが賢明と考えます。

 

鳥飼総合法律事務所

 

※ 本記事の内容は、平成27年8月末現在の法令やガイドラインに基づいています。

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