連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第68回 さまざまな寄附金 

第68回 さまざまな寄附金

Q 今月、当社では次の3件の寄附金の支出がありました。これらはすべて税法上も寄附金として取扱われますか?

(1)本社の地元の商工会主催の秋祭りの寄附金

(2)地元の大規模な花火大会への寄附金

(3)社長の出身大学の100周年記念事業への寄附金

 

A 会計上寄附金として支出した金員であっても、その性格によっては、税法上寄附金として取扱われるとは限りません。(1)は税法上も寄附金と考えられますが、(2)は場合によっては広告宣伝費に該当する可能性があります。(3)は役員賞与に該当する可能性が高いものと思われます。

 

[解説]

1.寄附金の定義

法人税法上の寄附金とは、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合に支出される金員をいい、いわゆる一般的な意味の寄附金よりずっと幅広い概念です。ただし、広告宣伝、見本品等の費用、交際費・接待費・福利厚生費となるものは除かれます(法人税法37条7項)。つまり、寄附金という名目で支出されたとしても、広告宣伝費と解釈されるものであれば、全額損金に算入されることもありうるわけです。

 

2.広告宣伝費と寄附金との区分

 ここで、(1)と(2)とを比較してみます。

 (1)の寄附金は、商工会から毎年支出を依頼され、今期も例年のごとく支出をあてにされているため断りきれず協力している寄附金です。会社が寄附をした事実は、祭典本部の掲示板に小さく社名が掲載されるのみで一般の人たちに知られるところではなく、当該掲示板を覗いて誰が寄附しているかを確認するような人はほとんどいないものと考えられます。すなわち、広告宣伝の効果は全く見込めない支出となります。

 一方、広告宣伝費とは、その受け手である不特定多数の者に対し法人の事業活動が存在すること又は法人の商品、サービス等が他の事業者のものに優越することを訴える宣伝的効果が当該法人の事業の遂行に資することから、そのような効果を発生させることを意図して行われるものであるところ、(2)の場合、全国から花火見物に客が訪れ、相当部数発行される花火のパンフレットに社名及び広告が大きく掲載されるだけでなく、協賛した花火の打ち上げの際に何度も社名が放送されるようなケースであれば、広告宣伝の効果はかなり期待できるでしょう。そのような大規模な花火大会への寄附金の支出は、広告宣伝費として損金計上が可能となる可能性が高いものと考えられます。

 

3.個人が負担すべき性格の費用

これに対し、社長の出身大学への寄附金は、当該出身大学と法人との間に、取引先である、又は共同研究を行っている、等の事業上の関連性がない限り、法人が支出すべき性格の金員には該当しないものと考えられます。役員個人が支出すべき金員を法人が代わりに支払っているとすると、当該金員は役員賞与に認定され、損金不算入とされたうえ、源泉所得税の徴収漏れを指摘され、当該源泉税に係る不納付加算税の納付が必要となることもあります。オーナー企業である場合は特に、個人と法人との経費の区別が肝要です。

 

鳥飼総合法律事務所 税理士 窪澤 朋子

 

※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。

※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。

関連するコラム