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連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第19回  軽課税国における海外子会社は,実体を有し正当な事業活動を行っていれば,外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)が適用されることはないのか?

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
税務
 

軽課税国における海外子会社は,実体を有し正当な事業活動を行っていれば,外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)が適用されることはないのか?

 

Q 当社(日本企業)の子会社(香港)は,租税特別措置法にいう「特定外国子会社」には該当しますが,租税回避のためにつくったペーパー・カンパニーなどではなく,香港にオフィスもあり,現地で採用した従業員なども含め,子会社としての事業活動を自ら行っています。

タックス・ヘイブン対策税制は,軽課税国に実体のないペーパー・カンパニーをつくり,それにより日本の法人税を免れるような「租税回避の防止」のための制度だといわれていますので,現地にオフィスもあり自ら管理・運営もなされており,正当な事業活動を行っていさえすれば,日本の親会社の所得に合算されることはない(タックス・ヘイブン対策税制を適用されることはない)という理解でよろしいでしょうか。

 

A タックス・ヘイブン対策税制は,おっしゃるとおり,典型的な事例としては会社としての実体もないようなペーパー・カンパニーを軽課税国に設立し,日本の法人税を免れること,つまり租税回避の防止を目的とするものです。同税制は,昭和53年(1978年)に,租税特別措置法で制定されました(現行租税特別措置法66条の6)。

しかし,制度目的が「租税回避の防止」であるにもかかわらず,その制度目的のために制定された法律の要件を形式的に適用することで,ペーパー・カンパニーでなく,現地法人において正当な事業を行っている子会社であるにもかかわらず,タックス・ヘイブン対策税制を適用され,日本の親会社が課税処分を受ける事例が出ています。

特に,ご質問のように,香港に子会社を設立していた事例では,香港子会社と中国の工場との間で委託加工契約を締結し,委託加工業を行っているケースが多くあり(いわゆる来料加工取引),こうした事案では数年前に「適用除外要件」を満たしていないという理由で課税処分が複数ありました。

「適用除外要件」というのは,上記のとおり,タックス・ヘイブン対策税制の制度目的が「租税回避の防止」にあるため,逆に外国に子会社を設立し,当該子会社がその主たる事業を行うことについて,経済合理性がある場合には,タックス・ヘイブン対策税制の適用を排除するものです。こうした目的で制定された「適用除外要件」ですが,①実体基準(その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有すること),②管理支配基準(主たる事業の管理,支配及び運営を自ら行っていること)に加えて,主たる事業が何かにより採用される基準が分かれるもの(たとえば,③-1卸売業,銀行業等であれば「非関連者基準」になり,③-2租税特別措置法66条の6第3項1号所定の事業以外の事業(たとえば製造業)であれば「所在地基準」になります)があります。

来料加工取引の事案では,①実体基準,②管理支配基準を満たすことには争いがないのですが,③香港子会社の「主たる事業」が「卸売業」なのか「製造業」なのかをめぐり争いになっています。中国の工場に材料を提供し,製品の加工を委託するという契約の本旨からすれば,日本標準産業分類にいう「製造問屋」にあたり,通達上は「卸売業」にあたります。そうであれば,事実として「非関連者基準」は満たすため,「適用除外」となり,タックス・ヘイブン対策税制の適用はありません。

しかし,裁判所は,中国工場で製造業を行っているという事実を認定し,「所在地国基準」を満たさないという理由で,納税者(日本企業)の請求をいずれも棄却しています(最近の事例では,大阪高裁平成24年7月20日判決・裁判所HP・原審大阪地裁平成23年6月24日判決等があります)。

最近の改正では,適用除外になるものに「事業持株会社」も加えられるなどしていますが,その適用除外の要件は複雑で,かつ国税当局がどのような認定をするかまで考えたうえで対策を練っておかないと,思わぬ課税をされるリスクがあります。来料加工取引の裁判例では,経済合理性がある取引であったとしても,適用除外要件を満たさなければ適用は除外されないと判示されていますが,果たしてそれでよいのか(制度目的にそぐわない運用になっており,それが是認されていないか)という問題は残ります(最高裁判所の判断が待たれます)。軽課税国に子会社をもつ日本企業としては,裁判にならないよう(追徴課税されないよう)対策を事前に講じておくことが重要です。

以上

鳥飼総合法律事務所 弁護士 木山 泰嗣 

※ 本記事の内容は、2013年6月現在の法令等に基づいています。

 

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