鳥飼総合法律事務所

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連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第15回 下請業者に支払った外注費と消費税

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
税務
 

 

下請業者に支払った外注費と消費税

Q 当社は,業務の一部を下請けに出していて,当該業務に従事した下請業者(個人)に支払った金員は,請負契約に基づいて支出した外注費に当たるとして,課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)として計上し,消費税の申告をしていました。ところが,今般の税務調査において,当該支出は雇用契約に基づく賃金であるから課税仕入れとはならない旨の指摘を受けました。当該指摘が正しければ,過年度の消費税について修正申告をしなければなりませんが,この指摘は正しいでしょうか。

 

A 指摘の正誤は,貴社が業務に従事した者に支払った金員の性質(両者間の契約内容)により決まります。(通常,当該契約が,雇用契約である場合は調査官の上記指摘は正しいといえ,他方,請負契約である場合は誤っているといえます。)

 

 [解説]

1.消費税額と課税仕入れ

国内取引に係る消費税の税額は,課税標準(課税資産の譲渡等の対価の額)を算出し,それに税率を乗じて算出した税額から仕入税額控除をはじめとした各種控除を行った金額です。そして,ここにいう仕入税額控除とは,課税仕入れに含まれていた税額の控除のことをいいます。ですから,通常,課税仕入れに該当するか否かにより,仕入税額控除の額が変わり,結果として,消費税額も異なることになります。

2.課税仕入れ

課税仕入れについて,消費税法は,事業者が,事業として他の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けることであると定めていますが,同法は,併せて,所得税法第28条第1項に規定する給与等を対価とする役務の提供は除くと定めています。すなわち,給与等(所法28条1項)を対価とする役務の提供を受けることは,課税仕入れにはならないということです。

そこで,下請業者への支払いが下請事業者への賃金(給与等)と認定された場合は,給与等を対価とする役務の提供を受けることに該当することになるため,当該認定部分については課税仕入れとならず,そこに含まれていた税額については仕入税額控除をすることができないということになります。

このように何を対価とする役務の提供なのか(本件では賃金なのか外注費(請負代金)なのか)により,課税仕入れに該当するか否か,その結果として,消費税額が異なることになります。

3.課税仕入れの対象外となる「給与等」該当性

  では,課税仕入れとならない「給与等」に該当するか否かの判断はどのようになされるのでしょうか。

最高裁判例は,給与所得を「雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう」と定義したうえで,「この給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的又は時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない」と判示しています(最判昭和56年4月24日)。

また,消費税基本通達1-1-1は,個人事業者と給与所得者の区分が明らかでない場合は,例えば,次の事項を総合勘案して判定するものとするとしています。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

4.おわりに

  請負契約に基づく外注費として処理していたものが賃金であったと認定された場合には,消費税の修正申告・追加納付のほか,源泉所得税の徴収納付の問題も生じます。したがいまして,税務処理に当たっては,専門家に相談するなど,支払った金員の性質(契約内容)を慎重に判断することが必要です。また,金員の性質について調査で指摘された場合に,申告内容が正しいことを説明・立証ができるように事前に準備をしておくことが重要です。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士  堀 招子

※ 本記事の内容は、2013年4月現在の法令等に基づいています。

 

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