受託者

 民事信託を組成するにあたり、もっとも苦労するのが受託者を誰にするかということである。いわゆる「お一人様」については、信頼できる親族受託者候補がいないということと同義であるから、民事信託の利用はあきらめざるを得ない。もっとも受託者候補の親族が複数いる場合も問題になることがある。受託者は、自己の名義で信託財産を管理処分するという絶大な権能を持つから、複数いる家族のうち誰を受託者にするかで、候補者家族が相続争いの前哨戦としてもめるからである。

 民事信託の受託者を決めるのは大変であるが、さらに大変なのが後継受託者であろう。受託者に自然人が就任する場合、自然人は死ぬから、その後継を決めておかないと、信託事務が停滞するおそれがある。受託者が高齢者であるときはなおさらだ。さらに信託監督人も必要だ、という話になると、人は何人いても足らない。世帯の構成人数が減り、地方では人口減・若年層減がすすむなか、不可能を強いることに近いかもしれない。