リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第1回 いま話題の知財問題を鳥飼総合法律事務所の新進気鋭弁護士が解説します!

いま話題の知財問題を鳥飼総合法律事務所の新進気鋭弁護士が解説します!

★避けて通ることができない知財リスク★

 今日、特許権、商標権、意匠権、著作権などの知的財産に関する紛争のリスクがこれまでになく高まっています。脱工業時代に入り、知的財産が企業の成長のカギとなっているからです。例えば、アップル社は自社の工場を持たないファブレス企業です。まさに、知的財産がアップル社の成長のカギになっているのです。最近のアップルとサムソンの世界的規模の訴訟合戦に、そのことが現れています。各企業は知的財産をどのように成長のカギとして活用していくか、同時に、知的財産に関するリスクにどう対応するかを検討する必要に迫られているのです。

 そこで、本連載では、今回を皮切りに、隔週ごとに、知的財産権に関する重要な問題を取り上げ、企業に求められるリスクマネジメントの在り方ついて検討していきます。

 

★企業がさらされる知財トラブルの典型例★

 ①他社によって自社の知的財産権が侵害されると、自社製品等のシェアが侵害製品によって奪われてしまいます。また、品質の低い侵害製品が出回ることで自社のブランドが毀損される恐れも看過できない問題です。他社による自社の知的財産権侵害は、知的財産を巡る企業トラブルの典型例ということができるでしょう。このように、知的財産が侵害された時には侵害訴訟等で賠償請求等のアクションを起こすことになりますが、たとえば特許等が有効に成立しているか、本当に他社が自社の特許等を侵害しているかなど、争われた場合、対応は決して容易ではありません。

 逆に、自社が第三者の知的財産権を侵害してしまい、莫大な損害賠償請求にさらされるというリスクも企業にとっては大きな脅威です。賠償額はもちろん、信用リスク等によって、企業の屋台骨を揺るがす可能性も少なくはありません。世界中のあらゆる分野で知的財産権の網が複雑に張り巡らされ、かつ企業がこういった知財を積極的に運用しているという現状において、企業活動の中で知らずに他社の権利を侵害するというリスクは以前とは比較にならないほどに大きくなっています。

 ②権利侵害とは別に、自社のブランドについて商標を確保できず、ブランド展開で大きな支障が生じるという事態も今日的な問題として生じてきています。

 こうした対外的なもののみならず、自社内においても問題になる場合があります。青色発光ダイオード事件において、裁判所が200億円の支払いを認容したというのが、その例です(ただし、この事件では、最終的には控訴審において約8億円で和解されました。)。さらには、技術を取得した従業員が、競業他社でその技術を用いてしまうという問題も知財の流出問題として企業の頭を悩ませているところです。

 

 今回は、企業がさらされる知財トラブルの典型例を挙げさせていただきました。これらの事例からも分かる通り、日頃から知的財産権に関し適切なリスクマネジメントをしておくことが重要でしょう。

 

 本連載の第1回を最後までお読み下さいまして、有り難うございました。

 

この連載では、隔週ごとに、ホットなトピックを取り上げつつ、知的財産リスクやそれに対する企業の採るべき対策について、お役に立てる情報をお届けしてまいりたいと思います。引き続きお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 大久保映貴

 

【注意】本稿は一般的な情報を提供するものであり、法的助言を目的とするものではありません。個別の事案については、当該案件の個別の状況に応じて、弁護士等専門家の助言を求めていただく必要があります。また、本稿に記載された見解は筆者の個人的見解であり、鳥飼総合法律事務所を含む一切の組織の見解ではありません。

※ 本記事の内容は、2012年8月現在の法令等に基づいています。

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