鳥飼総合法律事務所

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連載 リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第20回 事業戦略まとめ審査の開始

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
知的財産・IT
 

第20回 事業戦略まとめ審査の開始

 

1 はじめに

  近年、技術が多様化、複雑化するのに伴い、1つの製品に多くの知的財産権が関わるようになりました。私たちが普段目にしたり手にしたりするモノ、例えば車やゴルフクラブ、化粧品などが複数の知的財産によって保護されていることは決して珍しいことではありません。車一つを取ってみても、複数の特許技術が融合しており、加えて車体のデザインの意匠や、車のロゴや名前の商標など、多数の知的財産が複雑に組み合わさって造られています。

  企業が新しい商品を発売するにあたって、複数の特許を出願した場合、今まではバラバラで審査がなされていました。しかし、そうすると新商品の公表までに特許を取れず、模倣されてしまうリスクがありました。

  多種多様な知的財産が合わさる商品などを開発する企業が事業を戦略的に展開し競争力を強化するためには、知的財産を一つのグループとして取得して活用することが重要となります。そこで、特許庁は、2013年4月から事業戦略対応まとめ審査の制度を開始しました。

 

2.事業戦略対応まとめ審査

  事業戦略対応まとめ審査(以下、「まとめ審査」とします。)とは、事業で活用される知的財産の包括的な取得を支援するため、国内外の事業に結びつく複数の特許・意匠・商標を含む知的財産を分野横断的に事業展開の時期に合わせて審査・権利化を行うことのできる制度のことをいいます。この制度により、出願時期や審査請求時期、担当審査部・審査室が異なっていたとしても、企業が求めるタイミングに合わせて複数の特許・意匠・商標の複数の知的財産の審査を特許庁に行ってもらうことが可能となります。

  出願人は審査官に対して事業説明を行い、審査官は各分野の審査官でチームを組み、事業の概要、事業における発明の位置づけを正確に把握したうえで、協議を進めながら審査を行います。

 

3.まとめ審査が可能な出願群

  まとめ審査を行うことのできる出願群は、以下の4つの要件を満たす必要があります。

 ①審査着手前の出願であること

 ②出願がすべて同一の出願人からの出願であること

 ③出願のうち、少なくとも1つは「外国関連出願」「実施関連出願」のいずれかの要件を満たしていること

 ④新規な事業や、国際展開を見据えた事業の中に位置づけられる特許等からなる出願群であること

   ここで、③の「外国関連出願」とは、出願人がその発明について、日本の特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している特許出願(国際出願も含む。)をいいます。また、「実施関連出願」とは、出願人自身又は出願人からその出願に係る発明について実施許諾を受けた者が、その発明を実施している出願をいいます。

  

4.さいごに

  2013年4月の制度実施開始に先立ち、特許庁はまとめ審査をトライアルで実施していました。このトライアルを活用して、ブリヂストンでは、開発中のエコタイヤについてまとめ審査を実施し、通常5、6年かかる審査が1年ほどで短縮される見通しだそうです。

  今まで日本企業は、「技術で勝って事業で負ける」と言われてきましたが、まとめ審査の制度を上手く利用して、日本企業が技術でも事業でも競争に負けず、活躍することが期待されます。

鳥飼総合法律事務所

※ 本記事の内容は、2013年6月現在の法令等に基づいています。

 

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