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連載 リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第19回 商標取消のリスクと防護標章

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
知的財産・IT
 

第19回 商標取消のリスクと防護標章

 

1.「WARAWARA」は「笑笑」か「わらわら広場」か

居酒屋チェーン「笑笑」を運営する外食大手「モンテローザ」が,大手ゲーム機メーカー「任天堂」の登録した商標登録について,商標登録の取り消しを求め,平成25年3月22日付けで特許庁に異議を申し立てたそうです。

異議の対象になった商標は,日本で昨年12月に発売された家庭用ゲーム機「WiiU(ウィー・ユー)」を起動した際,利用者の分身となるキャラクターが集まり,ゲームの感想などが表示される「わらわら広場」という画面についてのものだとのことです。

モンテローザは「笑笑」「WARAWARA」などの商標を登録しており,笑笑とWiiUの消費者の年齢層がほぼ重複するなどとして,「自社商標の便乗は許されない」と主張しているそうで,社はWiiUが販売されている北米,欧州など数十カ国の特許庁に対しても同様の対応を取る方針だとのことです。

 

2.異議申立ての制度

このニュースのように,商標には第三者からの異議申立ての制度が用意されています。

これは,商標登録について,商標掲載公報の発行の日から2月以内に,特許庁長官に対し,商標法や条約に違反することを理由に異議を申し立てる制度であり(商標法43条の2),取消決定が確定すれば,その商標権は,初めから存在しなかったものとみなされます(同43条の3第2項,第3項)。

また,日本における商標登録を基礎登録として国際登録を受けていた場合,その商標は指定締約国において保護されますが(マドリッド協定議定書2条(1)),この場合に,日本における商標登録が取り消されれば,国際登録も取り消されます(同議定書6条(3)(4))。

このように,商標には登録後の取消しのリスクがあります。

 

3.指定商品役務

商標法では,登録を受けることができない商標として,未登録著名商標(商標法4条1項10号),他人の登録商標又はこれに類似する商標(同11号),これら以外で他人の商標と出所混同のおそれのある商標(同15号)などが挙げられています。

商標法4条1項10号や11号で登録が禁止されるのは,商標自体が同一又は類似しているだけではなく,商品役務(商品やサービス)が同一又は類似の場合に限られます。

特許庁の商標検索サイトにおいて,「ワラワラ」という称呼(呼び方)で検索をかけると,モンテローザや任天堂が保有するものを含め,「ワラワラ」という称呼を持つ商標が出てきます。例えば,株式会社モンテローザが保有する「WARAWARA」の商標については,「飲食物の提供」「調味料」などの商品役務が指定されています。

一方,任天堂が保有する「WaraWara」の商標については,「インターネット又はその他の通信ネットワークを介して電子媒体又は情報をアップロード・投稿・提示・展示・タグ付け・ブログ作成・共有利用・その他提供することを可能にするためのコンピュータソフトウェア…(略)」などの商品役務が指定されています。

こうしてみると,両社の保有する商標の指定商品役務は同一又は類似といいにくいように思われます。

もっとも,指定商品役務が同一又は類似といえない場合でも,他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合には,登録を受けることができません(商標法4条1項15号)。

 

4.防護標章

自社の業務と同一又は類似といえない商品役務について,自社の有名な商標と同一の商標を他人が登録しないようにする手段としては,防護標章の登録を受けることが考えられます(商標法4条1項12号,64条等)。もっとも,防護標章と類似の商標について商標を取得することは,他の拒絶理由に該当しない限り,必ずしも禁止されていないことに注意が必要です。

なお,モンテローザは,「笑笑」を防護標章として登録していましたが,「WaraWara」については防護標章として登録していなかったようです。

商標取消のリスクを考えると,事前に商標・防護標章を確認しておくことが重要であり,逆に自分の登録した商標を他人に使われるリスクを考えるのであれば,防護標章の登録を検討した方がよいでしょう。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 香西 駿一郎

 

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