会社法QA 第27回 剰余金の配当

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 配当の回数の制限の廃止

【解説】
1 配当の回数の制限の廃止
 旧商法では、利益の配当は、決算に伴う利益処分の内容として行うか、中間配当として行うかのいずれかであり、年2回に制限されていました。しかし、分配可能額の範囲内で配当を行う限り、配当の回数に制限を設ける合理的理由はないとされ、会社法では、分配可能額の範囲内で行うのであれば、年にいつでも何回でも、必要な手続を経ることによって、剰余金の配当を行うことができることとなりました(会社法453条、454条1項)。これは、四半期毎に配当を行ういわゆる四半期配当の実施を可能としたものです。

2 取締役会決議に基づく剰余金の配当
 剰余金の配当にあたっては、原則として、株主総会において、配当財産の種類やその額などを決定しなければなりません(会社法454条1項、309条)。しかし、会計監査人設置会社のうち、委員会等設置会社及び取締役の任期を1年とする監査役会設置会社においては、定款で、取締役会の決議をもって、剰余金の配当を行うことができる旨を定めることができます(会社法459条)。また、更に進んで、株主総会では剰余金の配当の決議を行わない旨を定めることもできます(会社法460条1項)。そのように剰余金の配当に関する権限を株主総会の権限から外した場合には、株主が株主総会において剰余金の配当に関する株主提案を行うことも原則として出来なくなります。その場合に株主が配当に関する株主提案を行うためには、剰余金の配当に係る提案に加えて、剰余金の配当を取締役会決議によって実施する定款の定めを削除する旨の提案も併せて行わなければなりません。

3 剰余金の配当が可能な範囲
 剰余金の配当は、会社法461条1項の分配可能額を超えて行うことはできません。分配可能額は、最終の決算期に係る貸借対照表から算出される分配可能額を基準として、最終の決算期後、当該分配を行う時までに行われた金銭等の分配、資本金の減少等による分配可能額の増減を反映させて算出されます(会社法461条2項)。なお、会社法では、資本金の額に関わらず、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金があってもこれを株主に分配することは出来ません(会社法458条)。

【質問】
 当社(会計監査人設置会社)は、今年の6月に開催された定時株主総会において、取締役の任期を1年に短縮し、剰余金の配当を取締役会で行えるように定款変更を行い、現在四半期配当を実施しています。当社の第三四半期の配当に関しては、当社が運営するスーパーの商品券を配当として株主に交付したいと考えていますが、このような現物配当の場合も取締役会の決議によって配当を実施することが出来るのでしょうか。

【選択肢】
[1] 現物配当の場合にも、取締役会の決議によって配当を行うことができる。
[2] 現物配当の場合には、必ず、株主総会の特別決議が必要である。
[3] 現物配当の場合でも、株主に現物に代えて金銭による配当を受ける権利を与える場合には、取締役会の決議によって配当を行うことができる。

【正解】 [3]

【解説】
1 現物配当の決議要件
 旧商法では,金銭以外の財産を利益配当として株主に交付できるか否かについては争いがありましたが,会社法では,金銭以外の財産を剰余金の配当として株主に交付できることが明確化されています(会社法454条1項)。
 剰余金の配当として金銭以外の財産が交付される場合,株主によっては,配当財産を有効利用できない場合や換価が困難な場合が生じることが想定されます。
 現物配当におけるそのような不都合性を考慮し,現物配当については,株主に対し金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを会社に対して請求する権利)を与える場合を除き,株主総会の特別決議が必要とされています(会社法309条2項10号)。
 株主に金銭分配請求権が与えられる場合には,配当財産を有効利用できない場合には,代わって金銭の交付が受けられますので株主にとっても特段不都合はありません。したがって,その場合には株主総会の普通決議によって現物配当を行うことができますし,定款の定めによって取締役会決議によることも可能です。
 よって,設問の解答は③になります。

2 現物配当の場合の割当方法
 金銭以外の財産を配当する場合,当該財産の価値や単位によっては1株あたりの配当財産は端数とならざるを得ない場合も考えられます。例えば,1000円の商品券を配当しようとする場合,1000円の商品券には経済的にも1000円に近い価値がありますので,1000株ごとに1枚の商品券を配当するという場合も考えられます。その場合,1000株未満の株式を保有する株主は,商品券の配当を受けられないことになりますが,何の配当も受けられないのは不合理です。
 そこで,会社法では,一定数の株式に対してのみ配当財産の割当を行い,一定数に満たない数の株式に対しては,配当財産の価値に相当する金銭を支払うという取扱もできるようになりました(会社法454条4項2号,456条)。

 

※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正はこちらをご覧ください。

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