地銀のピンチ1~10 (再録)

 2017/12/27
 地銀のピンチが言われて久しい。人口減・都心への流出、地場中小企業の廃業、マイナス金利政策も打撃である。今年の大手銀行の株主総会への株主提案に、日銀にゼロ金利政策の深堀りをやめさせるべき、というのがあった。民間銀行の株主総会の議案にふさわしいかはともかく、経営者の本音としてはもろ手をあげて賛成したいところだったのではないか(もちろん否決されたが)。メガバンクのように海外への逃げ場がない地銀ではなおさらである。

2017/12/28
 地銀には、フィデューシャリーデュティーが追い打ちをかける。建前とすれば顧客第一主義であり反論の余地はない。この建前によって銀行は報酬の高い商品を優先的に販売できなくなった。行内の目標体系も高報酬商品の販売に偏りが発生しないように変更すべしとされる。すでにそうしている銀行もあるようだ。預金を集めてもマイナス金利や預金保険料でコストになるだけ。貸出は金利競争で利鞘減。投資商品の収益性もフィデューシャリーデュティーで下降線。とすると何に期待できるのか。これまであまり手を付けていない役務で何ができるのか。経済合理性ではない部分で顧客にどう付き合ってもらえるのか。より本源的には本当の企業の目利きができるのか。ということになるのか。

2018/01/15
 今朝の読売新聞に銀行員の転職希望者が急増しているとの記事がある。記事が言うように、このところのメガバンクを中心としたリストラ計画で、自分の居場所がなくなるのではないか、という危惧から出たものもあろう。しかしより本質的には、転職希望者は、銀行にかつての石炭や繊維産業のような、構造不況業種の影を見ているのではないか。統計があるわけではないが、かつて銀行員の転職市場は、銀行を中心とした金融に限られていたように思われる。しかし今は銀行から全くの他業種に転職したいという人が増えているのではないか。業界としての展望を見せられないと、就職先人気業種からの転落も思ったより早いかもしれない。
 ※読売新聞「銀行員の転職希望急増、収益悪化でリストラ不安」

2018/01/16
 今週のAERAに「銀行の寿命はあと7年」とする特集が組まれている。記事にあるように、これまで大手銀行は、東・京・早・慶を中心とした優秀な学生を吸引してきた。地銀ではそれらに加えて各地方の国立大学の優秀な学生を吸引してきた。
 ある信託銀行の上級役員が私にこう言ったことがある。「大銀行は優秀な学生を吸引してバカにして排出するシステムだ。」 行員は本部の戦略に疑問を持ってはいけない、支店長の方針に異を唱えてはいけない。そんなことをすればいかに優秀であっても出世階段には残れない。「つべこべ言わずに数字を作れ」ということだ。優秀な学生は考える学生であったはずだ。しかし大銀行に入れば考えない行員が重宝される。優秀な学生はそういった世渡りのルールがすぐにわかる。そしてそれに自分を慣らしていく。

2018/01/24
 今朝の日経新聞に、長崎の地銀の合併に待ったをかけている公取委の委員長の留任が決まり、地銀関係者からは複雑な反応との記事がある。記事にあるように、そもそも県という単位で市場占有率を考えるべきなのか。大都市にはメガが来る。隣接地域には隣接県の地銀が来る。これだけ交通・通信網が発達した中で県という単位はいかにも小さいように思える。さらに暴論かもしれないが、地域経済の大黒柱たる地銀にある程度の優越的な地位を許容しないと、地域経済の維持活性化について地銀に多くを期待できないのではないか。高度成長期、貸出金利は「銀行さん」が決めるものであって、顧客との交渉で決まるものではなかった。
 ※日本経済新聞「地銀関係者、複雑な反応」

2018/01/25
 今朝の日経新聞に、地銀が本業以外のリース、証券、信託等へ業務の拡大を図っているとの記事がある。リースや証券は伝統的な業務であるが、地銀にとって信託への参入は新しい。ただ、信託は儲からない。わずかな信託報酬で広範かつ専門的な事務を要求される。信託受託者が信託報酬以外の収益をあげることを忠実義務違反と指摘する学者もいる。信託にせよ証券にせよ、顧客へのトータルなコンサルティングの出口にすぎない。だから収益の源泉はコンサルティングにある。そのためには行員の専門性を高めることも必要だが、外部の弁護士や会計士等の専門職との連携も欠かせない。特に地方では専門職の数も少ないから、品質の高いサービスを提供できる専門職の囲い込みを急ぐ必要があるかもしれない。
 ※日本経済新聞「地銀、本業以外を開拓」

2018/02/02
 地銀は統合で生き残りを図る。ただ、統合で公取委が嫌う地域での優越的地位を獲得できないと、効果はコスト削減に限られる。このコスト削減効果の主なものは、システム経費と店舗やATMコーナーの維持費だろう。ただ、ここでは、他国比異常に高い日本の現金決済比率を前提とした、現在のビジネスモデルが続くことが、想定ないし期待されていると思われる。現金決済は今後も続くのだろうか。疑問を通り越している。その比率は近い将来確実におそらく急速に減少するだろう。民間の消費行動が変化しているのはもちろん、国も現金決済の削減の旗を振っている。

2018/02/05
 「まさか決済機能が一番先になくなるとは思わなかった。」大手銀行の役員の話である。仮想通貨が現金に取って替わるかはともかく、電子マネーやフィンテックは存在感を増すだろう。とすると、銀行は決済の出入口には関与できず、言ってみれば、水道における水道管の役割を果たすにすぎなくなる。蛇口はフィンテック企業や物流企業におさえられる。日常水道を使う消費者は蛇口を意識することはあっても、水道管を意識することはないだろう。このような決済制度の先行きを前提にすると、店舗やATMは統合の対象ではなく、ただひたすら廃止の対象なのかもしれない。地銀は統合によって、本来一直線に廃止すべき店舗やATMを、統合のち廃止という無駄なステップを踏むことになるのかもしれない。

2018/03/15
 地銀に対する日銀考査ポイントに収益力があげられている。ただ、非金利収益をあげるのは簡単ではない。簡単に解が見つかっているのなら、それをやらない経営者は経営者としてはとうに失格だろう。非金利収益はコンサルティングサービスや新商品のもととなる創意工夫が出発点である。創意工夫は「遊び」の中から出現する。時短の大きな掛け声の中「無駄」な残業ができない環境で創意工夫は生まれにくい。さらに創意工夫が具体的なプロダクトになるためには、試行錯誤という「無駄」な時間が必要だが、「無駄」を正当化できないのが昨今の組織風土だ。

2018/03/20
 今朝の日経に静岡銀行とみずほFGの提携記事が掲載されている。記事にあるように静岡銀行は三菱UFJ系列であり、大概の地銀はこれまでまずは系列メガとの連携をしてきたから、この組み合わせは異例ともいえる。さらに静岡銀行は県下の地銀であるスルガ銀行と対照的に、「お堅い・保守的」なイメージが先行していたから、真先に系列を超えた提携を敢行することには驚きがある。それだけ地銀の危機感は高いということか。ただ、メガと組むことでどういうメリットがあるのかは難しい問だ。メニューとしては記事にある通りであると思われるが、具体的な果実を収穫するためには結構な工夫が必要でありそうだ。
 ※日本経済新聞「みずほ、静岡銀と提携」

投稿者等

奈良 正哉

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