国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 金融・証券税制の改正について2

第33回 金融・証券税制の改正について
2 投資信託課税の見直し
3 上場株式等にかかる譲渡所得等に関する優遇税制の見直し

2 投資信託課税の見直し
 投資信託の運用収益は、利子、配当、証券の売却益など各種の収益が混在しております。そこで、公社債投資信託の収益の分配金は、貯蓄の果実である預貯金の利子と類似するところから、利子所得に分類され、株式投資信託の収益の分配金は、投資者が出資者の立場で受ける利益の分配に当たるところから、配当所得に分類されるのです。これは、所得税法上の分類ですが、現在の税制では、租税特別措置法により株式投資信託の収益分配金は利子並みの課税となっております。現行の投資信託にかかる税制は、次表のとおりです。

証券投資信託 収益分配金 譲渡損益
[1]公社債投資信託 源泉分離課税
所得税15%・住民税5% 譲渡益は非課税
譲渡損失はないもの
とされる。
[2]公募株式投資信託(特定株式投資信託
 を除く)
[3]私募株式投資信託 原則総合課税
所得税20%の源泉徴収 申告分離課税
所得税15%、住民
税5%
[4]特定株式資信託(特定の株価指数に採
 用されている銘柄のみに投資を行う公募
 株式投資信託、日経300・ETFなど)
[5]不動産投資信託(Jーリート)

 今回の改正では、平成16年1月1日以後に支払われる公募株式投資信託の収益分配金は、利子並みの課税から除外され、配当所得として課税されます。また、公募株式投資信託の償還や中途解約により元本割れが生じた場合の損失は、平成16年1月1日以後、株式等の譲渡益と通算ができるようになります。

3 上場株式等にかかる譲渡所得等に関する優遇税制の見直し
 上場株式等の譲渡益については、平成14年末をもって源泉分離課税が廃止され、所得税10%、住民税5%の申告分離課税に一本化されました。そして、平成17年12月31日までの間に1年を超えて保有している上場株式等を譲渡した場合には、所得税7%、住民税3%の税率に軽減されるとともに、譲渡益から年間合計で100万円を限度とする特別控除の適用が認められております。
 今回の改正では、平成15年1月1日以後5年間に上場株式等を譲渡した場合には、その譲渡益に対して、所有期間の長短にかかわらず、所得税7%、住民税3%の税率により課税とされることになります。これに伴い、1年超保有の上場株式等を譲渡した場合の100万円特別控除は、廃止されます。