鳥飼総合法律事務所

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【印紙税】請負に関する契約書(請負と売買)

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投稿者
沼野友香
取扱分野
税務
鳥飼総合法律事務所
 

 

 公益財団法人不動産流通推進センター「月刊 不動産フォーラム21」で連載をしております。2018年6月号の記事を掲載致します。

 その他の記事はこちらの「印紙税相談室のご案内」のページをご覧ください。


不動産取引に必須の印紙税の知識(9)

―請負に関する契約書(請負と売買)―

沼野 友香

鳥飼総合法律事務所弁護士

鳥飼総合法律事務所印紙税相談室所属

監修:鳥飼重和

 

 [ぬまの・ゆか]鳥飼総合法律事務所弁護士。中央大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。 (株)日本経営税務法務研究会主催、新日本法規出版(株)協賛による「印紙税検定(初級篇)®」の立ち上げに参画。鳥飼総合法律事務所印紙税相談室の創設メンバー。(email:inshi-zei@torikai.gr.jp

 

1 請負と売買の区別、請負と売買の混合契約

  今回も、引き続き請負に関する契約書(第2号文書)について解説します。今回は請負と売買の区別や、請負と売買の混合契約に係る印紙税の課否判断について解説します。

 

2 請負とは、売買とは

 請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して 報酬を支払うことを約することにより効力を生ずる契約をいいます。請負の特徴は、契約の目的が仕事を完成させることにある点です。

 他方、売買とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生ずる契約をいいます。売買の特徴は、契約の目的が目的物の所有権を移転することにある点です。

 こうして並べてみると両者の性質は全く異なりますが、実務上は請負と売買の両方の要素を合わせ持つ契約が多数存在します。例えば、紳士服店において、イージーオーダーで紳士服を購入する場合、生地の購入をする点からは売買に当たるように思えますが、仕立てを依頼する点からは請負に当たるようにも思えます。また、既製服を購入し裾上げをしてもらう場合はどのように考えるかなども問題になります。

 印紙税との関係では、ある文書が請負に該当すれば、請負に関する契約書(第2号文書)や請負の継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)として印紙税の課税対象となるのに対し、売買に該当すれば、継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)に該当するものと不動産等の売買に関する契約書(第1号の1文書)に該当するもの以外は不課税となりますので、請負と売買の区別が重要になります。

 

3 請負と売買の区別

 それでは、ある契約が請負なのか売買なのかは、どのように区別すればよいでしょうか。

 基本的には、請負と売買とは、前述の通り契約の目的が異なりますので、その契約の目的が仕事の完成なのか(請負)、目的物の所有権移転なのか(売買)により区別することになります。すなわち、契約当事者の意思が仕事の完成と財産権の移転のどちらに重きを置いているのかを文書の記載から客観的に判断する必要があります。

 とはいえ、実務上はその判断が難しいことも多々あります。そこで、印紙税法の基本通達では、具体的な取扱いについて次のような基準で判断することとしています。

 

表1 請負契約か売買契約かの判断基準

 

内 容

請負契約

注文者の指示に基づき一定の仕様または規格等に従い、製作者の労務によって工作物を建設することを内容とするもの

・家屋の建築

・道路の建設

・橋りょうの架設

注文者が材料の全部または主要部分を提供(有償、無償を問わない。)し、製作者がこれによって一定物品を製作することを内容とするもの

・生地提供の洋服の仕立て

・材料支給による物品の製作

製作者の材料を用いて注文者の設計または指示した規格等に従い一定物品を製作することを内容とするもの

・船舶、車両、機械、家具等の製作

・洋服等の仕立て

一定の物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするもの

・大型機械の取付け

修理または加工することを内容とするもの

・建物・機械の修繕、塗装

売買契約

一定の物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするものであるが、取付行為が簡単であって、特別の技術を要しないもの

・家庭用電気器具の取付け

製作者が工作物をあらかじめ一定の規格で統一し、これにそれぞれの価格を付して注文を受け、当該規格に従い工作物を建設し、供給することを内容とするもの

・建売住宅の供給(不動産の譲渡に関する契約書)

あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し、供給することを内容とするもの

・カタログまたは見本による機械、家具等の製作

 

 先に例に挙げたイージーオーダーは、表1のうち「製作者の材料を用いて注文者の設計または指示した規格等に従い一定物品を製作することを内容とするもの」に該当するため、この契約全体が1個の請負契約に当たり、この契約にかかる文書は2号文書に該当します。したがって、伝票等に「生地代7万円、お仕立代3万円」との記載がある場合でも、仕立代3万円ではなく生地代7万円と仕立代3万円の合計金額である10万円が記載金額となります。

 他方、裾上げを伴う既製服の購入は規格品の購入になりますので売買に、裾上げは別途修理加工を内容とするので請負に当たります。印紙税法では、1つの文書に課税事項とそうでない事項が記載されている場合、当該文書全体が課税文書に該当することになりますので、裾上げを伴う既製服の購入にかかる文書は、2号文書に該当することになります。

 この場合、伝票等に「スーツ代9万円、お直し代1万円」との記載がある場合は、お直し代1万円が記載金額となりますが、「スーツ代(お直し代含む)10万円」と記載するとスーツ代を含む10万円が記載金額になってしまいますので、その金額を明確に区別して記載する必要があります。

 以上の通り、イージーオーダーの場合も裾上げを伴う既製服の購入の場合も請負に関する契約書(第2号文書)に該当することには変わりありませんが、記載金額の表記の仕方について、注意が必要です。

 

4 1個の契約か、複数契約か

 甲は、不動産業者乙から建物を購入し、キッチンについては備え付けのものから最新設備を整えたシステムキッチンに変更することにしました。図1は、甲と乙がこの件に関して打合せをした際に確認のため残した文書です。図1の文書が印紙税法上の契約書に当たるか、当たるとすればいくらの印紙を貼る必要があるかについて考えていきましょう。

図1

平成30年6月1日

打合せメモ

 

甲と乙は、甲が乙から購入する建物のキッチンのリフォーム工事に関して、次のとおり

確認する。

 

システムキッチン改装工事 総額 120万円

キッチン本体価格

70万円

A社製 品番○○○○

大理石カウンター、スライドドア、食器洗い乾燥機‥

取付工事

30万円

解体処分工事、取付工事、水道工事、電気工事‥

内装工事

20万円

フローリング張替え、壁・天井のクロス張替え‥

 

以上、確認します。                  甲 ㊞  

                        乙 ㊞  

 印紙税法上の契約書とは、その名称のいかんを問わず、契約の成立等の事実を証明する目的で作成する文書をいいます。図1の文書は「打合せメモ」という表題ではあるものの、その記載内容はキッチンのリフォーム工事に関する契約の成立の事実を証明するものであり、印紙税法上の契約書に当たります。不動産売買やリフォーム工事のように契約金額が大きな契約では、本契約に先立ち、打合せ内容を確認し署名押印をすることも珍しくないと思いますが、内容によっては課税文書になりますので、注意が必要です。

 次に、図1の文書が印紙税法上の契約書に当たるとして、いくらの印紙を貼るべきでしょうか。前提として、この契約は取付・内装工事を含むもので、これらの工事は特別の技術を要するものなので、図1の文書は請負に関する契約書(第2号文書)に当たります。では、この契約は、キッチン本体の調達を含めた1個の請負契約、あるいは、キッチンの売買と工事請負の複数契約のどちらであると考えるべきでしょうか。前者の場合、記載金額はキッチン本体と工事費用の合計額である120万円となり印紙税額は400円となりますが、後者の場合、記載金額は工事費用合計50万円、印紙税額は200円となります。

 この点、キッチン本体に関しては「A社製 品番○○○○」と記載があることから規格品の売買契約であるといえるため、図1の契約はキッチン本体に関する売買と取付・内装工事に関する請負との複数契約に当たります。したがって、図1では請負契約に関する取付工事と内装工事費用の合計50万円が記載金額となり、200円の印紙を貼る必要があります。なお、仮に、「システムキッチン改装工事総額120万円」との記載のみで内訳が記載されていない場合は、総額120万円に応じた400円の印紙貼付が必要になります。

 このように、請負と売買の判断も、請負と委任の判断同様、やはり契約の目的から読み解き判断する必要があります。次回以降もぜひご期待ください。

以上

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