鳥飼総合法律事務所

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【印紙税】契約書を2通以上作成した場合(写し、副本、謄本、コピーの扱い)

著者
沼野友香
取扱分野
税務
 

 

 

 

公益財団法人不動産流通推進センター「月刊 不動産フォーラム21」で連載をしております。

2017年11月号の記事を掲載致します。

なお、本連載は、弊所の弁護士山田重則も執筆しておりますので、併せてご覧ください。


不動産取引に必須の印紙税の知識(2)

―契約書を2通以上作成した場合―

 

1 意外と知らない印紙税の正しい知識

  意外と知らない印紙税の正しい知識として、前回は、表題が「契約書」でない文書や、契約当事者の一方のみが作成する文書の取扱い、消費税の取扱いなどについて解説しました。今回は、1つの契約に関して複数の文書が作成される場合の取扱いについて解説します。具体例として、建築工事請負契約を取り上げ、これに関して作成される複数の文書に印紙を貼る必要があるのかについて解説を行います。

 

2 同じ内容の契約書を複数通作成した場合

図1のような契約書を2通作成した場合、その2通ともに印紙を貼る必要があるのでしょうか。

図1

建築工事請負契約書

 

注文者甲と請負者乙は次のとおり建築工事請負契約を締結する。

 

第1条 甲は乙に対し下記の建築工事を注文し、乙はこれを請け負い、完成させることを約した。

第2条 請負代金は金1億円とし、…

(省略)

本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、各自1通を所持する

 

平成29年10月1日  

                          甲 ㊞  

                          乙 ㊞   

 結論としては、同じ内容の契約書を2通作成すれば2通ともに、3通作成すれば3通ともに印紙を貼る必要があります。

 印紙税は、契約が成立したことに対して課されるのではなく、契約の成立を証明する目的で文書を作成したことに対して課されます。したがって、成立した契約が1つでも、契約の成立を証明する目的で文書を2通作成すれば2通に、3通作成すれば3通に印紙を貼らなければなりません。

 

3 契約書をコピーして写しを作成した場合

  それでは、2で例に挙げた契約書を2通作成する代わりに、契約書の原本は1通のみ作成して甲が所持し、乙は原本をコピーしてその写しを所持することにした場合(図2)、原本と写しの両方に印紙を貼る必要があるのでしょうか。

図2

建築工事請負契約書

 

 注文者甲と請負者乙は次のとおり建築工事請負契約を締結する。

 

第1条 甲は乙に対し下記の建築工事を注文し、乙はこれを請け負い、完成させることを約した。

第2条 請負代金は金1億円とし、…

(省略)

本契約の成立を証するため、本書1通を作成し、甲がこれを所持する

 

平成29年10月1日

                           甲 ㊞ 

                           乙 ㊞ 

  結論としては、印紙を貼る必要があるのは原本のみで、その写しに印紙を貼る必要はありません。印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書に対して課されるところ、単なる写しはこれに該当しないからです。

  なお、契約書の原本を1通のみ作成するとした場合には、図2のように契約書にもその旨記載しておくとよいでしょう。

では、次のような場合はどうでしょうか。

・コピーした写しに契約当事者双方または一方の署名押印があるもの

・コピーした写しに「原本と相違ない」などの記述があるもの

・写しに原本との割印があるもの

結論としては、ここに掲げた文書にはすべて印紙を貼る必要があります。このような文書はたとえ写しであっても、契約の成立を証明する目的で作成された文書といえるからです。

 

4 仮契約書と本契約書

   建築工事を受注した場合、まず仮請負契約書を作成したうえで(図3)、後日、本契約書を締結する(図4)という運用をされている会社も多くあるかと思います。では、この「仮契約書」にも印紙を貼らなければいけないのでしょうか。

図3

建築工事請負仮契約書

 

1 工事名  ○○○○工事

2 工事場所 ○○県○○市‥

3 工期   着工 本契約成立で定める日

       完成 平成34年9月30日

4 請負代金 ¥100,000,000―

(省略)

  契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙が記名押印のうえ各自1通所持する。

平成29年9月1日

                           甲 ㊞ 

                           乙 ㊞ 

 

図4

建築工事請負契約書

 

  注文者甲と請負者乙は次のとおり建築工事請負契約を締結する。

 

第1条 甲は乙に対し下記の建築工事を注文し、乙はこれを請け負い、完成させることを約した。

第2条 請負代金については、平成29年9月1日付け建築工事請負仮契約書の内容を本契約の内容とする。

(省略)

 本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙が記名押印のうえ各自1通所持する。

平成29年10月1日

                           甲 ㊞ 

                           乙 ㊞ 

   結論としては、「仮契約書」にも印紙を貼る必要があります。仮契約は、予約にあたりますが、予約も契約であり、印紙税法上の契約書には予約契約書も含まれます。したがって、仮契約書は請負の予約という契約の成立を証明する目的で作成される文書であるため、印紙を貼る必要があります。この結論は、後日、本契約書を作成し、本契約書に印紙を貼っても変わりません。また、仮契約書に印紙を貼っても、後日、本契約書を作成すれば、その本契約書にも印紙を貼る必要があります。これは、印紙税が、契約が成立したことに対して課されるのではなく、契約の成立を証明する目的で文書を作成したことに対して課されるものだからです。

   ただし、仮契約書と本契約書の両方を作成する場合、本契約書で「○年○月○日付け仮請負契約書の内容を本契約とする。」などと記載して仮契約書の請負金額を引用し、本契約書で請負金額を記載しない場合には、本契約書に貼付する印紙を200円で済ませることができます。例えば、請負金額1億円なら1通につき6万円の印紙の貼付が必要となりますので、本来であれば仮契約で6万円、本契約で6万円、合計12万円の印紙貼付が必要になります(軽減税率が適用されると合計6万円になります。)。しかし、仮契約の内容を本契約で引用すれば、仮契約の6万円と本契約の200円で6万200円の印紙貼付で済むことになります(軽減税率が適用されると合計3万2000円になります。)。

 

このように印紙税は、契約の成立を証明する目的で文書を作成したことに対して課されるものです。1つの契約に関して複数の文書が作成される場合でも、文書の書き方によってはそのうちの一部の文書に印紙を貼るだけで済ませることができますし、印紙代を抑えることもできます。次回以降もこの連載では、文書の書き方によって印紙代が変わってくる事例を取り上げる予定です。ぜひ、ご期待ください。

以上

鳥飼総合法律事務所 弁護士 沼野友香

 

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