民事信託の信託財産 11
信託銀行が個人に提供する信託商品は、信託財産としてはほぼ金銭しか受け入れていない。そして事実上銀行内の内部振替によって、無リスクしたがってほぼゼロリターンの運用をしている。これはある意味仕方がないことだ。信託商品の性格上元本保証が求められるものについて、リスクのある積極的な運用はできないからだ。このことは、民事信託についてもあてはまる。しかし、企業年金にせよ公的年金にせよ、老後の生活資金というリスクを嫌う性格ではあるが、株価や為替等のリスクを積極的に取って運用されている。これは、信託期間が長いからリスク許容性があると判断されているからだ。とすれば、商事信託においても民事信託おいても、信託期間が長期に渡ることが予測されるものについては、投資信託のようなリスク商品による運用を考えてよいと思われる。その際の適合性判断は、受託者を基準についてなされ、受益者については信託資産の使い道として考慮されることになると思われる。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
関連するコラム
-
2024.04.15
奈良 正哉
地方金融機関の受難は続く
相続を期に、地方に住む親から都会に住む子供世代に預金が移動している(4月14日日経参照)。金利が付…
-
2024.04.12
奈良 正哉
廃業・倒産も悪いことばかりじゃない
ゼロゼロ融資の麻酔も切れ始めて、2023年度、廃業・休業は5万件を数え、倒産も9千件を超えた。対し…
-
2024.02.28
空き家問題ニュース
空き家問題は根深いので間欠泉のようにニュースになる(2月28日日経参照)。有効利用しようとしてもそ…
-
2024.02.14
奈良 正哉
成年後見を使いやすく
認知症高齢者の保護のため後見制度がある。これを使いやすくするための検討がなされている(2月14日日…
奈良 正哉のコラム
-
2024.04.17
奈良 正哉
紅麹の影響はどこまで
紅麹が問題となった小林製薬は、再発防止策を取締役会で定期に話し合うことにしたそうだ(4月16日日経…
-
2024.04.15
奈良 正哉
地方金融機関の受難は続く
相続を期に、地方に住む親から都会に住む子供世代に預金が移動している(4月14日日経参照)。金利が付…
-
2024.04.12
奈良 正哉
廃業・倒産も悪いことばかりじゃない
ゼロゼロ融資の麻酔も切れ始めて、2023年度、廃業・休業は5万件を数え、倒産も9千件を超えた。対し…
-
2024.04.11
奈良 正哉
中国人の中国脱出
中国からの脱出は外資だけではない。中国人も大挙して脱出している。メキシコ経由アメリカへの不法中国移…