会社法QA(平成26年改正後版) 第16回 取締役の会社に対する責任と免除制度

【解説】

1 取締役の会社に対する責任について過失責任が原則となりました!

 取締役の会社に対する責任について、会社法は、原則として全て任務懈怠責任(過失責任)として取り扱われることが明文として規定され、取締役の責任は、過失責任が原則となりました(会社法120条4項、423条、462条2項、465条等)。ただし、①自己のために利益相反取引をした取締役(会社法428条)、②株主の権利行使に関し財産上の利益を供与した取締役(会社法120条4項但書)については、無過失責任とされています。

2 取締役の会社に対する責任につき免除制度が整理されました!

 取締役の会社に対する責任の免除については、会社法においては、①総株主の同意による全部免除(会社法424条)、②株主総会の特別決議による一部免除(会社法425条)、③定款授権に基づく取締役会の決議による一部免除(会社法426条)、④責任限定契約による責任の一部限定(会社法427条)に整理されました。利益相反取引に関しても他の責任と同様の免除のみが認められることになりました。

 株主総会の特別決議による責任の一部免除は,代表取締役は報酬の6年分、代表取締役以外の業務執行取締役等は報酬の4年分、業務執行取締役等以外の取締役は報酬の2年分を限度と規定しています(会社法425条1項1号)。責任限定契約に関しては,定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額と,責任限定契約で定めた最低限度額を比較していずれか高い方を限度として認められています(会社法427条1項)。なお,責任の一部免除の要件として,取締役が職務を行うにつき善意かつ無重過失の場合に限定されています。

 なお、任務懈怠責任以外の責任の免除には、一部免除、責任限定契約に関する規定の適用はなく、原則どおり、総株主の同意が必要です(会社法120条5項、462条3項、465条2項)。

【質問】

 当社は、取締役会と監査役を設置する株式会社です。平成28年2月に代表取締役である甲に対して1000万円の貸付を行うことにつき取締役会で承認し、貸付を行ったところ、甲は1円も返済することなく、同年6月に突然代表取締役を辞任するとともに、所在がつかめなくなってしまいました。株主には、取締役の責任免除について少なからず反対の者がいます。甲及び他の取締役の責任はどうなりますか。なお、責任免除に関する定款規定は一切ありません。

【選択肢】

[1] 甲は責任を免れないが、他の取締役は一部責任を免れる可能性がある。

[2] 甲も他の取締役も責任を免れる可能性がある。

[3] 甲も他の取締役も責任を免れることはできない。

【正解】 [1]

【解説】

1 利益相反取引に関する取締役の責任についての取り扱い

 会社法は、利益相反取引に関する取締役の責任の法的性質について、任務懈怠責任として位置付けました(会社法423条1項)。そこで、利益相反取引行為により会社に損害が生じた場合であっても、任務の懈怠がなければ、取締役は責任を免れます。但し、任務を怠っていないことについての立証責任は取締役側にあります(会社法423条3項)(責任を負う取締役の範囲については会社法423条3項、356条、419条2項、369条5項参照)。取締役への金銭貸付も他の利益相反取引と同様の扱いを受けることになりました。

 また、利益相反取引に関する取締役の責任も、総株主の同意による全部免除(会社法424条)、株主総会の特別決議による一部免除(会社法425条)、定款授権に基づく取締役会の決議による一部免除(会社法426条)、責任限定契約による責任の一部限定(会社法427条)も認められることになりました。

 なお、自己のために会社と直接利益相反取引をした取締役は無過失責任であり、かつ一部免除も認められません(会社法428条)。

 そこで、自己のために会社と直接利益相反取引をした取締役以外の取締役は、任務を怠っていないことを立証できれば、責任を免れます。また、総株主の同意(全部免除)、株主総会の特別決議・定款授権に基づく取締役会の決議による免除(一部免除)、責任限定契約による責任の一部限定があれば、全部または一部の責任を免れることになります。他方、会社と直接利益相反取引をした取締役は、総株主の同意以外に責任を免れる方法はありません。

2 【質問】の場合

 甲は責任を免れませんが、他の取締役は責任を免れる場合があります。具体的にいうと、免除に反対の株主がいる以上、総株主の同意はとれませんので、甲は責任を免れません。その他の責任を負うべき取締役は、任務を怠っていない場合には責任を免れることになります。また、任務を怠っていないことにつき立証できなくとも、重過失がないときは、株主総会の特別決議によって一部免除される可能性もあります。但し、反対の株主がいるので、全部免除にはなりません。

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