会社法QA 第24回 端株制度の廃止と単元株制度

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 端株制度の廃止と単元株制度

【解説】
1 端株制度が廃止されました
 旧商法においては、出資単位の小さい者に議決権以外の一定の権利を与える制度として端株制度と単元株制度がありました。端株が1株に満たないものであるのに対して、単元未満株式は、一定の数の株式をもって1単元とし、1単元未満の株式については議決権を与えないようにする制度でした。この2つの制度は、出資単位の小さい者に議決権以外の一定の権利を与えるという意味では共通していたため、会社法では、単元株制度に統一し、端株制度は廃止しました。ただし、旧商法下で端株制度を採用していた場合、会社法施行の際現に存在する端株については、従前の例によるとされています(整備法86条1項)。
 会社法においては、端数が生じるような行為がなされる場合、会社は、一株に満たない端数について、端数の合計数に相当する数の株式を競売した上、端数に応じて競売代金を分配することとしました(会社法234条1項、235条)。なお、市場価格のある株式については、競売以外の方法も認められています(会社法234条2項)。

2 単元未満株式の内容が見直されました
 旧商法において、端株制度が一株の端数であって本来株主としての権利が与えられないものであったのに対し、単元未満株式は、本来一株として権利が与えられるものの権利を制限しているという意味で異なる制度でした。そのような経緯から、端株の場合、一定の権利を除き、定款で権利を制限することが可能でしたが、単元未満株式は議決権と議決権数を基準とする少数株主権のみ制限され、その他の権利を定款で制限することはできませんでした。
 会社法においては、端株制度を廃止して、単元株制度に統一したことから、単元未満株式についても、一定の株主権を除いて、株主権を定款で制限することができるようにし、旧商法上の端株主の権利とほぼ同様の取り扱いにしました。具体的には、会社法189条2項及び会社法施行規則35条に挙げられています。
 旧商法下において端株制度を採用している会社が、定款で単元株制度を導入する場合には、旧商法下での端株主の権利と変化がないように、一定の権利制限が定款に記載されているものとみなされることとなっています(整備法86条2項)。

【質問】
 当社の発行可能株式総数は8000株、発行済株式総数は2000株です。当社の現在の株価は150万円前後で推移しています。そこで、株式の流通性を高めるため、1株50万円程度にしながら、議決権数は維持したいと考えています。その際、次のような方法で行うとしたら、正しい考えはどれでしょうか。

【選択肢】
[1] 株式分割と株式の無償割当のどちらも取締役会決議で済む。
[2] 株式分割で行う場合は取締役会決議で済むが、株式の無償割当の場合は株主総会を開く必要がある。
[3] 株式分割も株式の無償割当も株主総会が必要となってくる。

【正解】 [2]

【解説】
1 株価を引き下げる方法
 高くなった株価を引き下げるには、資本を維持しながら株式数を増加させる必要があります。会社法において資本を維持しながら株式数のみを増加させる方法としては、株式分割と株式の無償割当ての2つの方法が考えられます。
 株式分割は、1株を数株に分割する方法です。他方、株式の無償割当ては、会社法により新たに認められた制度で、株式数に応じて、株式を無償で割り当てる制度です。

2 議決権数を維持する方法
 株式数の増加に応じて、当然議決権数も増加します。そこで、株式数を増やしながら議決権数を維持するには、株式数の増加に伴い増加した議決権数を減少させる必要があります。議決権数を減少させる方法としては、単元株制度の導入または単元株式数の増加が考えられます。具体的には、1株を2株に分割する、または1株に対し1株の株式を無償割当てすると、議決権数も当然2倍に増加します。その場合、例えば、同時に1単元100株であるところを1単元200株とする、または2株を1単元とする単元株制度を導入すれば、株式数が増加しても議決権数は維持されます。

3 株式分割、株式の無償割当ての限界と単元株式数の変更
 株式分割も株式の無償割当ても、発行可能株式総数の制約を受けます。そこで、発行可能株式総数が発行済株式総数の2倍だった場合、1株を2株にする分割、1株に対し1株割り当てる無償割当てが限界となります。したがって、それ以上の割合の株式分割や無償割当てを行うには、発行可能株式総数を増加させる定款変更が必要になりますので、原則として株主総会の特別決議が必要となります。ただし、株式分割の場合、増加する株式数の範囲内であれば、株主総会決議によらないで発行可能株式総数を変更できるので(184条2項)、結果として、どのような割合でも株式分割を行うことは可能となります。
 また、単元株式数の変更についても、定款記載事項ですので、株主総会の特別決議による定款変更が必要になるのが原則です(309条2項11号)。ただし、株式の分割と同時に単元株式数を増加すること、または単元株式数についての定款の定めを設けることは、各株主の有する議決権数に変動が生じない限り、株主総会決議によらなくても可能とされています(191条)。なお、単元株式数の減少または廃止については、取締役会決議で行うことが可能です(195条1項)。

4 【質問】の場合
 【質問】の場合、1株150万円のところを50万円程度とするのですから、理論的には、1株を3株にする株式分割または1株に対し2株の株式を無償割当てする方法により、株価を下げることは可能です。そして、発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍ですから、どちらの方法を採る場合にも、取締役会決議で行うことが可能です。
 次に、議決権数の維持ですが、議決権数を維持するためには、単元株式数の増加または単元株式数の設定が必要となります。株式分割を利用する場合、同時に単元株式数の増加または単元株式数の設定を行う場合には、株主総会によらないで行うことが可能ですが、株式の無償割当てを利用する場合、単元株式数の増加または単元株式数の設定についての定款変更を株主総会決議によって行う必要があります。したがって、株式分割を利用する場合には、取締役会決議のみで株価を下げながら議決権数を維持することが可能ですが、株式の無償割当てを利用する場合、取締役会決議で株価を下げることは可能ですが、株主総会を開かないで議決権数を維持することはできません。
 そこで、正解は②です。

 

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正はこちらをご覧ください。

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